『事前出荷情報(ASN)の活用による納品伝票レス・検品レス運用ガイドライン』を取りまとめ
公益財団法人流通経済研究所と当社が事務局を務める日用品物流標準化ワーキンググループは8月、「事前出荷情報(ASN)の活用による納品伝票レス・検品レス運用ガイドライン」を公表しました。これは、物流業務効率化の一環としての「納品伝票レス」「検品レス」の運用に関して、業務指針を示すものです。その中身を詳しくご紹介します。
メーカー・物流事業者・卸売業の連携のもとガイドラインを作成
持続可能で生産性の高い物流に向けて当社が推進している「ロジスティクスEDI」のデータ種の一つである「出荷予定データ」は、ASN(Advanced Shipping Notice=事前出荷情報)としての活用が可能です。メーカーがASNを送信することで、卸売業は商品の到着日や数量などが事前に分かり、あらかじめ荷受け態勢を整えることができます。
さらに、ASNの活用により、納品案内書などの紙書類を廃止する「納品伝票レス」や、卸売業の拠点で到着時に行っている検品作業を省略する「検品レス」も可能になります。
ただし、納品伝票レスや検品レスの導入にあたっては様々な課題が想定されます。そこで、日用品メーカー13社と物流事業者12社が参加し、公益財団法人流通経済研究所と当社が事務局を務めるサプライチェーン物流生産性研究会「日用品物流標準化ワーキンググループ」で、納品伝票レスと検品レスの標準業務モデルについて検討を行いました。さらに、全国化粧品日用品卸連合会を通じて卸売業とも実用化へ向けた連携を図り、『事前出荷情報(ASN)の活用による納品伝票レス・検品レス運用ガイドライン』を取りまとめました。
以下、「納品伝票レス」と「検品レス」に分けて、ガイドラインの内容を解説します。
ペーパーレスへの移行措置としてドライバーに「配送指示書」を交付
ロジスティクスEDIでは、現在メーカーが業際統一伝票などで卸売業に連絡している納品明細情報を、ASNで伝えます。卸売業は、商品受領の証しとして「入荷検収データ」を返送します。これにより、従来は紙でやり取りしていた情報をデータ送信で代替でき、ペーパーレス化が実現します。これが「納品伝票レス」です。
ただし伝票を廃止することにより、配送事業者においては不都合が生じることも想定されます。ガイドラインではその対策として、ドライバーに対する配送指示のため、必要に応じて別途「配送指示書」を発行することを示しています。
配送指示書に卸売業が捺印し受領の証しとする
「配送指示書」については業際統一伝票のような標準化は行わず記載項目のみを定め、レイアウトは各社で決めるものとしています。図表1のフォーマットは一例です。複写式ではなく、A4普通紙などでの運用を想定しています。
必須記載項目は納品日、届け先(住所、名称、電話番号)、配送事業者(拠点名)、荷主名、ケース数量などです。発注番号、荷物の重量や容積などは任意記載項目です。荷主別、届け先別、配送車両別に配送指示書を発行し、共同配送などで同一車両に複数荷主を積載する場合も同様とします。
運用イメージは図表2のようになります。
上段の「区域(貸切)」は特定荷主(1社または複数)の荷物だけを運ぶ場合で、配送指示書は卸売業に渡さず、受領印を押してもらって、物流事業者が出荷拠点に持ち帰ります。前述の通り、メーカーは卸売業から受領の証しとして「入荷検収データ」を受け取ることができるため紙の書類は不要になりますが、その活用が確立するまでの過渡期においては、捺印された配送指示書を受領の証しとしてメーカーも活用します。
下段の「路線」は不特定荷主の荷物を混載する場合で、従来の路線便事業者指定伝票に基づいて配送を行い、配送指示書は発行しません。
なお、同一車両で複数届け先へ納品するケースで、ドライバーが荷下ろし時に商品を確認する必要がある場合は、別途「納品明細リスト」を発行するものとします。遠隔地への納品において、エリア中継地で届け先別車両へ積み替える場合にも、仕分け用の「納品明細リスト」を発行します。
「納品明細リスト」はドライバー作業用のため、書式は問いません。また、紙媒体にこだわることなく、電子デバイスの活用も検討すべきと考えられます。
停電などトラブル時の対応策も想定されるケースごとに提示
納品伝票レスの運用に関連して、停電やシステムダウンなどのトラブルによりASNの送受信ができなくなった際の緊急対応策もガイドラインで示しています。
たとえばメーカー側のシステムでASNデータが作成できない場合は、出荷拠点で積み込み時などに用いる検品リスト(作業用帳票)を「納品明細書」として流用し、ASNの代替とします。
また、ASNデータは作成できたもののロジスティクスEDIへの接続ができない場合、当社が通常回線とは別に用意している緊急時のアップロード・ダウンロード機能を使ってデータの授受を行います。
検品への立ち会い省略によりドライバーの滞留時間を短縮
続いて「検品レス」について解説します。
現在、「2024年問題」と言われるようにドライバーの人手不足や労働時間規制への対応が課題となっています。そこで、精度の高いASNデータ送信や納品が行われていることを前提に、ドライバー立ち会いでの検品を省略することで、ドライバーが卸売業拠点にとどまる時間を短縮する取り組みが「検品レス」です。
具体的には図表3のようになります。現状は荷下ろし時に検品や仕分け・積み替えが行われ、ドライバーはその完了を待ってから伝票に受領印を受けて退出しています。一方「検品レス」では、ドライバーの業務は荷下ろしまでとし、検品や仕分け・積み替えの完了を待たずに「配送指示書」に受領印を受けて退出します。パレットに積み付けられた状態で視認可能な天面・側面や、混載パレットに積み付けられた各製品外装(ケース)に汚破損がないかはその場で確認しますが、数量の確認にドライバーは立ち会わないものとします。
ただし納品方法については個別取引条件に関わる場合があるため、まずメーカー・卸売業間で条件を明確化し、それに基づいてメーカー・物流事業者間で委託業務内容を確認する必要があります。
納品精度99.9%以上の実績を検品レス導入の目安に
検品レスを行うには、原則として総納品件数に対し99.9%以上の精度を確保していることを条件とします。納品精度は、「1‒(事故件数÷総出荷件数)」で求め、件数は日別・届け先別納品を1件と数えます。
納品精度を検証するためには一定期間(3カ月程度)の実績を評価し、99.9%以上の水準を安定的に確保できていることを確認の上、メーカー・卸売業の合意に基づき検品レスの運用を開始するものとします。
共同配送の場合も、共同配送拠点における納品精度を関係各社全体で検証し、卸売業との合意を経て運用を開始します。
納品後発覚の数量差異・汚破損は関係各社間で原因を調査
検品レスの運用にあたっては、万が一、ドライバー退出後に数量差異や汚破損などの瑕疵が発覚した場合の対応や責任の所在について、事前に決めておく必要があります。メーカー・卸売業間では個別の取引条件などに関わる場合もあり、その場合は各取引条件などに準拠するものとしますが、ガイドラインでは基本となる対応案を示しています。
たとえば卸売業からメーカーへの数量差異(商品違いを含む)や汚破損の申し出は原則として納品後3日(営業日)以内とし、双方で原因調査を行い、その結果に基づいて責任の所在を決定します。
その上でメーカーの責任となった場合、メーカーと物流事業者(倉庫事業者・配送事業者)間でも原因調査や責任所在の決定を行う必要があります。出荷・納品時の外観チェックで確認すべき汚破損については、原則として配送事業者の責としないことが妥当と考えられます。
なお、検品レスの運用開始後も、納品瑕疵の発生頻度や発生原因についてメーカー・物流事業者の双方で評価・分析を行い、物流品質の維持・向上に努める取り組みが重要になります。
『事前出荷情報(ASN)の活用による納品伝票レス・検品レス運用ガイドライン』は、当社のホームページからダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。ご不明な点やもっと詳しく知りたいことがございましたら、お問い合わせください。
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