- 国内市場の成熟化と一部利用企業の
事業構造変革による影響を受け、減収減益に - 当社が中心的に関わる一般消費財流通業界は売上が安定している一方、業界規模はほぼ横ばいと国内市場は成熟化し、一部大手メーカーを中心に収益性改善と持続的成長のための事業構造の変革が急速に進んでいます。具体的には、商品の高付加価値化や海外進出の加速ほか、特に当社事業に関連する動きとしては、経営資源の集中と選択によるSKU(アイテム数)削減、商品の大容量化、物流効率化のための施策としての発注頻度の減少、発注ロット数の増加などがあげられます。さらに、卸流通を経由しないPB(プライベートブランド)商品比率の上昇など、EDIデータ量減に繋がる動きも顕著となりつつあります。
そうした厳しい事業環境の中にあっても、ターゲットを絞り、営業リソースを集中させたことにより、新規ユーザー数は目標以上の成果を得ることができました。特に「販売レポートサービス」とWeb受注-仕入通信サービスの「MITEOS(ミテオス)」が好調でした。「MITEOS」は新規卸売業の利用開始に伴い、今後、さらに業界の垣根を超えた様々なメーカーへの広がりが期待でき、ユーザーの裾野拡大に繋がるものと見ています。このように、新規は順調に獲得し、また、既存ユーザーも継続してご利用いただいているものの、前述の経営資源の集中の取り組みが一部の既存ユーザーにみられたため、データ量全体としては微減となった結果、減収減益となりました。近い将来、到来すると見込んでいたトレンドが想定より早く始まった感触がある中での減収減益であり、非常に重く受け止めています。 - 新たな事業成長に向けた成長戦略の進捗状況
- 当社では事業環境の変化を前提とし、データ活⽤を通じた業界全体の「生産性向上・業務効率化」「トップライン増力化」「サステナビリティ」の実現に寄与する視点から、2年前より、新たな価値を創造する取り組みを継続しています。
◾️基幹EDIの横展開×深掘り
業界インフラとして新しい市場展開を進める中、業界を問わず、新たなユーザー獲得に注力し、全体としての接続本数・社数ともに着実に増加しています。日用品業界以外のユーザーでは、従来より横展開を進めてきたペットフード・ペット用品、OTC医薬品、健康食品業界が、新規ユーザーの約半数となっており、着実に広がっています。
基幹EDIデータの深掘りとして進めている、未利用のEDIデータの利用推進については、ロジスティクスEDIで活用されるASN(出荷予定)データの接続本数・利用社数が増加しており、徐々に営業活動の成果が出てきています。
◾️対象領域の拡大
「対象領域の拡大」では、データ活用による一般消費財流通の高度化実現に向けた取り組みとして、物流領域における「ロジスティクスEDI」とマーケティング領域における「POSデータクレンジングサービス」の立ち上げに挑戦してきました。
ロジスティクスEDIは利用社数、接続本数ともに順調に増加しているものの、物流業務は個社ごとに異なり、業界として調整することに多大な時間と労力がかかっており、当初の計画よりは遅めの進捗となっています。しかしながら、業界として一つ一つ課題を整理していくという、地道な活動を行った結果、41期以降の利用拡大に繋がる見通しが立ってきました。メーカー、卸売業各社が業界としてASNデータの必要性を理解し、ご協力いただいており、調整が終わり、実際に利用が開始されれば、広がりが加速するものと捉えています。
一方、POSデータクレンジングサービスは、これまでパッケージでのサービス提供を目指して進める中、評価はいただいていたものの、機能ごとの提供を希望される声が多く、また、各社が求める機能も少しずつ異なりました。当社が目指す汎用性のあるサービス提供とのズレが見えてきたこともあり、各社のニーズに沿ってカスタマイズ提供する方が望ましいという判断をして、関係会社である株式会社True Dataに見込み顧客を引き継いで対応いただくこととしました。今回の取り組みで学んだこと、経験したことを、新たなサービス創出に生かしていきます。
◾️新サービスの創出
従来のサービス提供の主目的としてきた業務効率化だけでなく、流通の整流化を目指した、ワークフローのSaas化という視点等からの新サービスの創出を進めています。
その第一弾となる、返品処理時にメーカー・卸売業間のやり取りをWeb画面上で完結するソリューション「返品ワークフローシステム・サービス」は、2025年9月にシステムの構築が完了しました。データ交換による業務効率化だけでなく、その先へ繋がる可能性のあるサービスと考えており、年内はファーストユーザー導入に注力し、この成功事例を皮切りに拡販させ、着実な事業化を目指します。
将来的にはEDIとの連携などにより機能拡張を図り、さらに本当の意味での循環型社会へと繋がるサービスへと進化させていきたいと考えています。その他、EDIデータ交換前後の業務プロセスに存在するワークフローの範囲までを包括するSaaSサービスや商品データベースをはじめ、当社が有する資産・今あるサービスを活用し、新しい価値を提供できる新サービスの創出に尽力し、事業化までのプロセスを高速化してまいります。
- 株主・投資家の皆様へ
- 当社は、株主の皆様への永続的かつ安定的な利益還元を行うことを重要な経営課題の一つとして位置付け、これまで「配当性向50%以上の維持」を目安に掲げ、上場以来一度も減配することなく、この方針を堅持してまいりました。今後もこの姿勢の継続をより明確にするために「累進配当」を明記するとともに、単年度の業績変動に左右されにくい、より安定的な配当を実現するために「DOE(純資産配当率)」を指標とし、4.5%を目安とすることといたしました。
引き続き厳しい環境が見込まれますが、主力事業の基幹EDIは確固たる収益基盤として、新規ユーザー獲得と新規接続拡大を通じて、維持・伸化に注力しつつ、新サービスを早期事業化させ、新たな事業構造による成長軌道を描いていきたいと考えています。そのためにも「在籍型出向制度」「越境学習の推進」「人材育成への注力」など人的資本価値の向上を通じて、全社戦略の実現を目指します。
「シンカ」を通じて、業界や社会になくてはらなない存在感のある会社に成長していく当社を、長期的視点で見守っていただきたく、今後ともより一層ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
