祖父を慕いし将軍 ――
家光公の祈りに染まる大猷院の秋
日光に秋の深まりを告げる風物詩といえば、日光東照宮の秋季例大祭、そして色彩豊かな紅葉です。10月半ばに開催される例大祭のハイライトは、甲冑姿の武者たちが表参道を進む「百物揃千人行列」。家康公の神霊を迎えた往時の行列を再現しています。
江戸時代、家康公を神として祀る東照宮の創建をきっかけに、日光は徳川家の聖地として整えられていきました。山岳信仰の霊場として崇拝された二荒山神社、輪王寺が並び立ち、信仰と自然が調和する宗教空間が築かれます。豪華絢爛な建築美も評価され、この一帯は世界遺産に登録されました。
例大祭が終わり一息ついたころ、山内の社寺は紅葉に染まりはじめます。東照宮から少し足を延ばしたところにある輪王寺大猷院は、徳川家光公の霊廟です。偉大な祖父・家康公を敬愛し、自らもこの地に眠ることを望んだ家光公の想いが、今もこの場所に息づいています。境内でひときわ存在感を放つ二天門は、紅葉に彩られ、まるでその想いを額縁におさめた一枚の絵のようです。
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日光の社寺 基本情報
■分類:文化遺産 ■登録年:1999年 ■所在地:栃木県日光市山内
■アクセス:JR日光駅・東武日光駅から東武バス乗車約7分、「神橋」バス停から徒歩で散策
■最新の情報は以下のHP、および各社寺のHPをご確認ください。
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監修・文 本田陽子
世界遺産ライター・解説者。60か国、200か所の世界遺産を訪問。世界中の文化や自然に触れた経験をもとに、各地の魅力や最新情報を伝えている。「絵本のようにめくる世界遺産の物語」(昭文社)監修、NHK出演など。