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化粧品や日用品を中心とする卸売業の業界団体・全国化粧品日用品卸連合会が2024年に創立50周年を迎えた。
その新会長として就任したばかりの株式会社東京堂代表取締役社長・小野瀬光隆氏をお訪ねし、業界を取り巻く環境や目指すべき方向性などについて、当社社長・坂田政一と語り合っていただいた。

創立50周年を迎えた全卸連  全国16組合227社の組合会員

坂田
 全国化粧品日用品卸連合会(以下、全卸連)は今年、創立50周年を迎えました。その節目での新会長ご就任、おめでとうございます。
小野瀬
 ありがとうございます。全卸連は1975年3月に全国の卸売業者と相互に連携と親睦を図り、共通する諸問題について研究や討議を行い、卸売業の健全な発展に貢献するという目的で設立されました。当初は全国石鹸洗剤化粧品歯磨雑貨卸商連合会という名称でしたが、1993年に現在の名称に変わりました。 組合会員は北海道から九州まで全国16組合227社です。大手企業の中には支店や支社がそれぞれの地域の組合に入っているケース があるので、企業数は177社です。賛助会員はメーカーを中心に72社です(2024年1月現在)。
坂田
 全卸連の主な活動を教えていただけますか。
小野瀬
 執行機関である常任理事会の下に、財務委員会や公正取引推進委員会など7つの委員会があります(組織図参照)。例えば、流通懇談会では流通に関わる課題について講師を招いて勉強会を行うなど、それぞれの委員会が定期的に意見交換会や研究会を開催しています。

流通データの標準化に 共に取り組む

坂田
 当社は1985年の設立当初から、全卸連さんには大変お世話になっています。当社では、卸売業とメーカー間のデータ交換(EDI)に取り組んでまいりました。このEDIで必要とされる5つの業界共通ルール(通信プロトコル、フォーマット、コード、運用ルール、契約)を標準化しており、この業界共通ルールを作成する際にベースとさせていただいたのが全卸連さんが定めていたフォーマットです。そういう意味でも当社とは非常に深い関係があります。また、現在も使用されている「業際統一伝票」は全卸連さんのご協力で策定できたものです。
小野瀬
 プラネットさんは全卸連の中でも特に情報システム委員会との関わりが深いと思います。私自身、情報システム委員会での活動期間が長く、そこでは卸売業の生産性を上げる活動を行ってきました。標準化という意味では、全卸連とプラネットで目指す方向が一致していると思います。
坂田
 あわせて当社が提供している商品データベースも全卸連さんと情報交換しながらつくり上げていったものです。当社は主にメーカーの出資で設立されたため、メーカーの意向は反映しやすい一方、卸売業に関しては当時、全国に相当数の企業があり、私たちが一社一社話を聞いて回るのは難しい状況でした。全卸連さんが調整窓口となって取りまとめていただいたおかげで、標準化の速度を上げることができました。
小野瀬
 全卸連には大手から中小まで規模の異なる様々な企業が加盟しています。営業エリアも異なり、各社とも課題は様々ですが、サプライチェーンをしっかり回していこうという全卸連の方針は変わりません。その手段の一つが流通データの標準化で、卸売業が個別に行うのではなく、どの企業でも使える汎用性の高いものを導入しようという考え方がありました。
坂田
 サプライチェーンがスムーズに動かない限り、メーカーがどんなに良い商品を作っても消費者には届きません。業界全体の要として、卸売業が果たす役割は非常に重要です。情報システム委員会の委員長だった小野瀬さんが全卸連の会長になったことを非常に心強く感じています。
小野瀬
 物流にはメーカーや小売業も関わっており、卸売業がすべてを担っているわけではありませんが、卸売業だけが遅れてしまうと、全体のサプライチェーンがスムーズに回らなくなってしまいます。プラネットさんの力も借りながら、あらゆることにスピード感を持って取り組んでいこうと思っています。

根本的な対応が迫られる2024年問題

坂田
 この4 月からいわゆる2024年問題が現実化しています。卸売業では今、どんなことが課題になっていますか。
小野瀬
 配送に携わる人の労働時間が規制されているので、各社とも荷受けのスピードアップが課題になっています。企業規模や取扱商品によっても状況が異なるため、まだあまり影響を受けていない企業もあると思いますが、物流量が増えてくれば、配送が遅れるなど次第に影響が広がっていくと思います。
坂田
 ずいぶん前からクローズアップされてきた課題ということもあり、物流業者、メーカー、卸売業、小売業とそれぞれが対応することで、今はまだ何とか回っている状況だと思います。しかし、根本的な対策を講じないと、3〜4年後に一気に破綻してしまう危険性があります。今から何をするべきかがとても重要だと感じています。
小野瀬
 メーカーとの物流に関してはプラネットさんが推進しているロジスティクスEDIを手段の一つとして改善していくことが考えられます。一方で、卸売業の場合、小売業との物流もあります。対メーカーは「受ける物流」で、対小売業では「出す物流」になりますが、小売業側では荷受けの待機時間が長いといった実情もあるようです。

ASNデータの活用に向け 啓発活動を推進

物流はコストではなく、サステナブルな機能として捉え直すことが必要です

坂田
坂田
 私たちはデータを扱う企業ですので、データを使った物流問題の解決方法を提案しています。メーカーと卸売業間でのASN(事前出荷情報)の共有が進めば、荷受け時間の短縮化、効率化につながります。今後はバース予約管理やパレットに関するデータの共有に取り組む予定で、こうしたことを、スピード感をもって行うことで2024年問題の解決に貢献できると考えています。
小野瀬
 おそらく今は、自分たちができる範囲で対応しているのが実情です。今後は人口も減り、人手不足も深刻化していきますから、根本的な解決を急ぐ必要があるでしょう。ASNを使った物流の効率化は有効な方法です。
 全卸連でもASNを導入すべきという方針を示していますが、対応するのはあくまでも個々の企業であり、それぞれの事情もあるので、対応しきれていないのが現状です。しかし、それをしないと最終的にサプライチェーンが回らなくなってしまいますから、全卸連としても「導入したらこんな効果があった」という実例を共有するなど、啓発活動を積極的に進めたいと思っています。
坂田
 これまで荷主となるメーカーは物流をコストと考えていましたが、発注がいくら増えても商品が届かなければ売上にならないわけですから、物流はビジネスを存続させるためのサステナブルな機能として捉え直す必要があると思っています。
 物流のサステナビリティをどう担保するか、業界が生き残るためには、それをしっかりと議論することが大切です。
小野瀬
 企業数でいえば、メーカーより卸売業の方が少ないので、本来は卸売業が先に対応する方がよいのかもしれません。上位10社ぐらいの卸売業がASNを導入すれば、シェアはかなりのパーセンテージになります。そうすれば、荷受け先の卸売業に合わせて導入するメーカーも増えてくると思います。

コスト増への対応とデータ種の活用

坂田
 物流以外では今、どんなことが課題になっていますか。
小野瀬
 やはりコストの問題です。人件費だけでなく、資材も高騰しています。そうしたコストを転嫁するため、去年から今年にかけ、多くのメーカーが商品の値上げに踏み切りましたが、卸売業では競争原理も働き、そこまで値上げがしきれていない場合もあると思っています。しかし、卸売業でも適正な利益が出ないと、サプライチェーンそのものが回っていかなくなる恐れがあります。コスト増への対応は、物流問題に次ぐ重要課題と認識しています。
坂田
 当社の課題としては、ご利用いただけるデータ種の数を広げることです。私たちは20種類のデータを提供していますが、積極的に活用していただいているものは限られており、まだお客様に十分に使っていただいていないデータ種が多くあります。卸売業、メーカーどちらにとっても効率化に寄与できると考えていますので、それをご理解いただけるよう取り組んでいきたいと思っています。
小野瀬
 私もプラネットさんが提供しているデータをすべて把握しているわけではありませんが、日々発生するような比較的件数の多いデータ種に関してはすでに使われており、あとはプラスアルファの部分だと思います。ですので、全卸連の情報システム委員会などで積極的にご提案いただくことも有効ではないでしょうか。
坂田
 私たちもデータ種の活用方法をしっかりとお伝えしていく必要があると考えています。
小野瀬
 おそらく各社のシステム担当者は理解していると思いますが、実際に効果を得るのは営業担当者ということもあり、システム担当者への説明だけでは導入が進まないケースがあります。情報システム委員会では、協議内容によってシステム担当者以外の方も出席するようにし、有益な意見交換に期待したいと思います。
坂田
 全卸連さんのスローガンの一つでもある「返品の削減」についてですが、私どもの返品予定データを活用して業務の効率化と可視化を進めることで、その先の「返品の削減」という目的にも寄与できるのではないかと考えています。そのために、どんなデータにすればいいか、どのようにそのデータを活用すればいいか、皆さんのご意見も伺いながら改善していきたいと思います。

さらなる効率化を目指し 積極的な情報交換に期待

メーカーや小売業との物流の無駄を省くことが、サプライチェーンの最適化につながります

小野瀬氏
坂田
 この4月から小野瀬会長の下、全卸連さんは次の50年に向け、新たなスタートを切ったわけですが、今後はどのようなことに力を入れていきたいとお考えですか。
小野瀬
 メーカーや小売業との間で無駄を省くことが効率化につながります。物流システムのさらなる標準化を目指し、関係各社と積極的に意見交換したいと思っています。その過程では、プラネットさんに対して「こういうデータを作ってほしい」というお願いをするかもしれません。
坂田
 従来のIT、今はDXとして取り組む大事な領域です。今まではいかにコストを削減し、生産性を上げるかという、いわば「守り」の視点で各社が取り組んできましたが、今後はITやDXを「攻め」の部分に使っていく必要があります。
 私たちもAIをはじめとする最先端のテクノロジーについて研究・開発を続けており、業界全体のサプライチェーンをアップグレードするために、攻めの部分で何ができるかを模索していきます。全卸連さんとも情報交換させていただきながら共に取り組んでいけることを望んでいます。
小野瀬
 何でも言い合えるフランクな関係が築けたらいいと思っています。すぐにできることと時間がかかること、あるいは不可能なこともあるかもしれませんが、ご相談させていただきたいと思います。
坂田
 お客様の立場から、様々なご意見をいただければ、新しい発想も生まれてくると思います。今後ともよろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。