燃えさかる炎の輪に向かって、獅子が跳ぶ。見つめる皆が息を呑む瞬間だ。山形県川西町で、八月に行われている獅子舞の一コマである。獅子舞といっても、幕の中に二人以上が入るものではなく、一人で一頭を演じる。基本的には三人編成であるため、「三匹獅子舞」と呼ばれる。夏の上演が多いのも特徴だ。
この三匹獅子舞は、西日本ではほとんど見られないのに対し、東日本には非常に数が多い。例えば東京都内には八十カ所程度、埼玉・群馬にはそれぞれ二百カ所前後はあるという。かの渋沢栄一が愛していたことは、大河ドラマにも取り上げられていた。
山形県にも数多く伝承されているのだが、毎年火の輪くぐりをするのは、この小松だけである。旧盆の八月十六日、まず大光院というお寺で演じられる。火の輪が有名ではあるものの、それは舞のごく一部に過ぎない。基本的には、華やかな花笠や早乙女たちとともに、豊作を祈願した踊りを演じていく芸能だ。
お寺で踊った後には、町内の各所でも踊り、また二十七日の諏訪神社祭礼でも踊られる。猛暑の中、大汗をかきながら踊り続ける獅子たちの努力を、心から賞賛したい。
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小松豊年獅子踊(こまつほうねんししおどり)
■開催日:8月16日(大光院)、8月27日(諏訪神社)
■開催地:山形県東置賜郡川西町
■アクセス:JR米坂線羽前小松駅から車で約5分
※最新の開催状況などは以下よりご確認ください。
川西町ホームページ
※日程は変更となる場合があります。また深夜に終了する所もありますので、下記サイトでご確認ください。
監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、 共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』(国書刊行会)など。