エイサーといえば、沖縄を代表する民俗芸能の一つだ。昨今では、全国の小学校でも踊られていたりする。しかしこれは、もともと沖縄の盆踊りなのである。江戸時代初期に、浄土宗を中心とした仏教が琉球にもたらされ、お盆に念仏の詠唱がおこなわれるようになった。「エイサー」という名前も、その念仏の囃子文句に由来しているらしい。
明治以降、若者が担い手となり、民謡なども取り入れることで舞踊化が始まった。そして戦後になると、太鼓を持って軽快に踊る現在のスタイルが確立するのである。近年では、沖縄ポップスで踊る創作エイサーも登場して、人気を博している。
しかし一方で、伝統にこだわる団体もある。うるま市に伝わる「平敷屋エイサー」は、最も古い形を残すとされるエイサーの一つだ。他でよく見られる大きな太鼓ではなく、パーランクーと呼ばれる小さな太鼓を叩き、僧侶を思わせる衣装をまとって裸足で踊る。素朴だが力強く、エイサーのルーツを感じさせてくれる踊りである。
こうした伝統の踊りと新しい踊りが共存するのが、沖縄のエイサーの魅力ともいえる。まさに、時代を超えたエンターテインメントなのだ。
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平敷屋(へしきや)エイサー
■開催日:旧暦7月15~16日 ■開催地:沖縄県うるま市勝連平敷屋(15日:拝所前/16日:浦ヶ浜公園)
■アクセス:那覇空港より車で約2時間
「うるま市エイサー祭り」(https://www.city.uruma.lg.jp/iina/2397)でも見ることができます。
※新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、「平敷屋エイサー」「うるま市エイサー祭り」ともに2020年の開催は未定(6月1日現在)。
監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、 共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』(国書刊行会)など。