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今治の継ぎ獅子

(公社)今治地方観光協会 提供

 子舞といえば、お正月の風物詩だと思っている人が多いかもしれない。しかしそれは、江戸の町などでおこなわれていたごく一部の習慣。全国には正月以外に、春や秋の祭り、夏の盆行事などに登場する獅子舞が数多く存在するのである。
 愛媛県今治市周辺では、5月の春祭りに「継ぎ獅子」と呼ばれる獅子舞が演じられている。「継ぎ」とは人の上に人が継がれていくこと。つまり、土台の人の肩に二段目の人が立ち、その人の肩にも三段目の人が立ち、という具合になる。三人連なるのが三継ぎ、四人だと四継ぎ。時に五継ぎ、かつては六継ぎもあったという。もはや、サーカスのような超絶パフォーマンスである。
 今治市にある神宮野間神社では、5月に入ると先陣を切ってこの継ぎ獅子が奉納される。いくつかの地区の獅子が順に演じていくが、ここでは石段の中ほどで演じるため、より一層スリリングに見える。
 上の獅子を演じるのは、体重の軽い子どもだ。下に立つ大人との信頼関係があってこそ、成立する技である。見ている方ははらはらするが、厳しい練習に裏付けされた熟練技は、5月の風のように清々しい。

今治の継ぎ獅子(いまばりのつぎじし)
■開催期間:5月上旬~下旬 ※2020年の日程詳細は右記サイト参照 https://www.city.imabari.ehime.jp/kanko/tsugi/
■開催地:愛媛県今治市 市内各神社
■アクセス:JR特急利用/岡山~今治(約2時間10分)、松山~今治(約40分)。その他の交通機関、地図などは下記サイト参照 http://www.oideya.gr.jp/accessibility/area.htm

監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長。
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』(国書刊行会)など。