節分といえば鬼だ。ここ神戸の長田神社でも、盛大に鬼が登場する「節分祭」がおこなわれている。主役は、七匹の鬼。まず登場する「一番太郎鬼」を筆頭に五匹の鬼が、燃え盛る松明を振りつつ厳かな舞をみせる。次いで太刀を持っての演舞となり、夕方近く、残りの「餅割鬼」と「尻くじり鬼」の二匹が登場。最後に、手にした槌や斧で大きな餅を割る。
この節分行事で、鬼は追い払われるどころか、人間の厄災を火や刀で追い払ってくれるのである。こうしたよい鬼が登場する節分は、兵庫県内にはたくさんあって、神社だけでなく仏教寺院でも見ることができる。中には、仏さまの化身として登場する鬼もいるほどである。
実は、これが節分の古い形なのだ。「追儺」というのが、この鬼を追い払う行事の古い呼び方で、奈良時代には既に始まっていた。本来は、このとき神さまがやってきて人々の厄を取り去ってくれるのだが、いつの間にか話が逆転。鬼が来るかのように、勘違いされてしまったのだ。
それでも、古代の行事の名残なのか、よい鬼が登場する節分行事は各地に残っている。長田神社の節分祭も、そんなよい鬼たちを見ることができる祭りである。
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長田神社の節分祭(古式追儺式)
■開催期間:2月3日 ■開催地:兵庫県神戸市長田区長田町3丁目1-1(長田神社)
■アクセス:神戸市営地下鉄長田駅・神戸高速線高速長田駅から徒歩7分。その他の交通機関、地図などは下記サイト参照 http://nagatajinja.jp/html/map.htm
監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長。
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』(国書刊行会)など。