FAXからデータ受発注の時代へ
・河守様はいつ頃から日用品・化粧品業界のシステム化に関わっていらっしゃるのですか。
- 河守
- 当時在籍していたチヨカジ株式会社(99年に中央物産と合併)時代の80年代後半頃に遡ります。当時のチヨカジでは、いち早く社内の商品コードにJANコードを取り入れるなど、標準化に力を入れていました。プラネットが88年にサービスを開始した発注データのFAX変換サービスについても、業界の標準化のために不可欠だとして、導入に積極的に取り組みました。
当時、卸売業とメーカー間の取引は今よりも煩雑でした。電話やFAXで受注するメーカーが多く、「A社はデータ、B社は電話、C社はFAX」と、複数パターンの発注方法が混在し、卸売業としては手間とコストがかかっていました。FAX変換サービスは、オンラインの発注データを帳票イメージに自動変換し、メーカーへFAXで配信するサービスで、プラネットに全ての発注データを送るだけで発注業務が完了する、大変画期的なものだったと思います。当時の岡部洋介・チヨカジ社長は東京の八重洲富士屋ホテル(当時)に取引先メーカーを集め、「当社はプラネットを活用した発注に全て切り替え、FAXや電話での発注は行いません」と発表しました。
・河守様がプラネットと関わる契機は何だったのですか。
- 河守
- 直接の接点を得たきっかけは、プラネットが97年にサービスを開始した「商品データベース」の構築時です。チヨカジが収集していた商品情報を提供しました。そのときはプラネットのことをよく知らなかったのですが、岡部に連れられてプラネットを訪問したのが初めてで、これ以降、仕事で東京へ来る度にプラネットを訪ねるようになり、業界の課題や最新動向などの話を聞かせていただき、大変勉強になりました。プラネットには今でもことあるごとに立ち寄って、情報交換させていただいています。
現在は、私が中央物産の担当者として出席している情報システム専門委員会を通じてのおつきあいもあります。同委員会は全卸連内の組織で、卸売業8社とメーカー7社が参加して、日用品・化粧品業界、卸売業界のシステム化・標準化をテーマに検討・討議しています。プラネットが事務局代行を務め、会合場所も提供いただいています。
対小売業システムも標準化が課題
・佐藤様はどのような経緯で全卸連に関わられたのですか。
- 佐藤
- 私は株式会社コバショウ出身で、08年にパルタック(現PALTAC)との合併後に情報システム担当となりました。私が携わっているのは対小売業のシステムです。当時は「流通BMS」※ が公開された時期でした。システムは製配販で捉える視点が必要であるため、全卸連の情報システム専門委員会に出席するようになりました。
・対小売業のシステムではどのような取り組みを行っていますか。
- 佐藤
- 以前の小売業も、電話やFAXでの発注が多く、小売業ごとにルールに違いがあるのが卸売業の課題でした。今でこそ流通BMSは普及してきましたが、小売業者の数はメーカーよりも多く、システムも多様なので、卸売業とメーカー間に比べると標準化が難しい面があります。10月実施の消費税増税に伴う軽減税率へのシステム対応についても、未対応の小売業の作業が発生することになります。プラネットの基幹EDI、商品データベースは軽減税率へのシステム対応も標準化されており、その意味でも一歩先を行っていると思います。
卸売業・メーカー間の標準化を全卸連が主導
・全卸連の情報システム専門委員会ではどのような活動をされているのでしょうか。
- 河守
- ずいぶん前のことですが、卸売業とメーカー間での取引に利用する「業際統一伝票」の導入があります。
かつては、卸売業とメーカー間で用いられる伝票の様式は様々で、しかも手書きでした。これを全卸連から提案し、医薬品や食品など、どの業界でも共通で使える伝票を制定しました。
業界の卸売業のニーズを取りまとめ、メーカーと協議しながらデータの標準化や仕様変更について決定しています。
目下のテーマは物流の取り組みについてです。業界全体のムダを省き、物流の効率化を進める必要があります。具体的には卸売業の入荷業務を軽減するため、納入前にメーカーから出荷データにどのような情報を盛り込むべきかの検討を始めたところです。
・お二人は情報システム専門委員会をどのように評価されていますか。
- 河守
- 日用品・化粧品業界は取り扱いアイテムがとても多く、しかもシェアが違う商品を多岐にわたり扱っていますから、システム化が不可欠です。互いに協力して課題解決を図ろうという意識が、この業界は他業界よりも高いかもしれません。情報システム専門委員会は、「競争は店頭で、システムは共通で」を実践しています。事務局代行として「場」を提供していただいているプラネットの存在意義は大きいです。
- 佐藤
- 今はサプライチェーン・マネジメントが重視される時代であり、メーカー・卸売業・小売業の効率的な連携が欠かせません。弊社もロボット導入による積み荷作業の自動化や、無人レジ導入による小売店頭の省人化など、製配販全体の生産性の向上や人不足の対策にチャレンジしています。こうした新しい取り組みに対応したシステムを構築する際にも、情報システム専門委員会から得た情報が役立っています。
社会貢献活動である「CSSカップ」がボウリング業界内で大きな反響を呼び、今年1月には、日本ボウリング場協会の中里会長から全卸連に感謝状が贈られた
全卸連は、視覚障害や貧困に直面する子どもたちがボウリングを通して笑顔になることを目的にした社会貢献活動「Child's Smile Support(CSS)」を企画。「全卸連チャリティーボウリング大会 CSSカップ」は今年で3度目の開催となる
製配販の課題解決に取り組むプラネットの存在意義を再認識
・プラネットへの評価と、今後への期待をお聞かせ下さい。
- 河守
- プラネットは基幹EDIをはじめとする各種サービスを提供する、日用品・化粧品業界にとってのインフラであり、「業界全体の標準化を推進する」という重要な役割を担っています。またインバウンド関連の調査レポートの発行やセミナー・研究会の開催など、業界の発展に役立つホットなテーマを掘り下げて、情報提供しています。常識にとらわれず、日用品・化粧品業界に今何が必要か、何が求められているのかをいち早くキャッチして、情報提供を続けていただきたいと思います。ID‐POS分析などの関連会社の情報を共通情報として提供いただけると、メーカー、卸売業にとって価値ある情報になると思います。
- 佐藤
- 商品情報をそのままマスタに取り込める「商品データベース」は弊社でも重宝しています。半期に一回発行されている冊子「新製品カタログ」は弊社の商品部スタッフの必携品です。プラネットが欠かせない存在であるのを日々実感しています。
- 河守
- プラネットがこの業界に果たしている役割についての啓蒙は今以上に力を入れる必要があると思います。ユーザー企業の若い世代には、プラネットを他のシステムベンダーと同様に捉えている人がいるかもしれません。今年施行される消費税増税・軽減税率について業界として何をすべきかを各関係省庁にヒアリングするなど、わかりやすくまとめてくれたのはプラネットでした。こうした業界への貢献を理解してもらうためにも、プラネットとユーザー企業の若い世代との接点を増やす取り組みが求められます。
- 佐藤
- 確かに、提供するシステムが安定しているだけに、その存在意義をあまり意識しなくなっている若手はいるでしょう。より密なコミュニケーションの機会をつくっていただけるとありがたいです。
・最後に全卸連・情報システム専門委員会の今後の展望をお聞かせ下さい。
- 河守
- かつて数千を数えた全卸連の加盟社・団体は19組合・205社(2018年9月現在)になりましたが、今も業界内の調整役としての重要性に変わりはありません。製配販のサプライチェーンの最適化に向けたシステムのあり方など、業界を横断して検討する課題は山積しています。少しでも多くの卸売業に参加していただき、これからもプラネットと一緒に課題解決と業界標準づくりに取り組んでまいりたいと思います。
- 佐藤
- 加盟社・団体の代表としての責任を果たしながら小売業とメーカーの連携も視野に入れたシステム開発を研究し、製配販の課題解決に貢献する委員会でありたいと思います。
情報システム専門委員会・副委員長
中央物産株式会社
経営戦略室 リスク統括室室長
河守 修(かわもり おさむ)/写真右
情報システム専門委員会・委員
株式会社PALTAC
情報システム本部主任
佐藤 和弘(さとう かずひろ)/写真左
■全国化粧品日用品卸連合会
会 長/森友 徳兵衛(森友通商株式会社)
沿 革/1975年3月、全国石鹸洗剤化粧品歯磨雑貨卸商連合会として発足。1993年6月、全国化粧品日用品卸連合会(全卸連)となる。
本部所在地/東京都千代田区神田佐久間河岸84番地 サンユウビル501号室
組合員数 /19組合205社(2018年9月現在)
Webサイト /http://zenoroshiren.jp/