神楽という芸能は、全国各地で見ることができる。その歴史は古く、平安時代には宮中で行われていたという記録がある。もともとは、神かみがか懸りをして神さまのお告げを聞くための芸能であったようだが、やがて神さまの物語を演じる芝居的な要素が強くなっていった。
地域によってさまざまな特徴をもつ神楽だが、宮崎県では夜通し演じられる神楽が有名だ。その代表的な一つがこの「高千穂の夜神楽」だろう。高千穂町内19地区の公民館や民家で11月から2月にかけて行われている。
写真は、下野集落の「戸取の舞」。神話の里である高千穂にふさわしく、天岩戸神話に因んだストーリーが繰り広げられる。岩戸に隠れてしまった太陽神アマテラスになんとかお戻り願おうと、ウズメらが舞を繰り広げる。そして力自慢のタヂカラオが岩戸を取り除く(ゆえに「戸取」)というシーンだ。そして岩戸が開くちょうどその頃、実際に朝日が昇ってくるのである。
見に行きたいけれど、徹夜で見るのは大変という方は、高千穂神社に行くといい。毎晩、4演目を演じているので、その雰囲気を味わうことができる。
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高千穂(たかちほ)の夜神楽(よかぐら)
■開催期間:11月中旬~2月上旬 ■開催地:宮崎県西臼杵郡高千穂町
■アクセス:交通機関、アクセス:交通機関、地図などは右記サイト参照 http://takachiho-kanko.info/access
※2019年の夜神楽日程表は10月頃発表予定。
※夜神楽の季節以外にも、高千穂神社境内の神楽殿で毎晩20時より、三十三番の神楽の中から代表的な4番を公開しています。
監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長。
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』(国書刊行会)など。