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株式会社あらた「九州南センター」

現地特別リポート

物流センターの近未来最新モデル
AI活用で効率化・省人化を実現

日用品・化粧品業界において、わが国トップクラスの卸売業である株式会社あらたが、2018年 6月、鹿児島市に九州エリア2カ所目の物流センターとなる九州南センターを開設した。同センター は、「省人化」をコンセプトにAIを活用した最先端の物流システムを導入。同センターで検証され た最新機能は、全国のあらた物流センターに随時導入され、センターの生産性向上に貢献している。

お話をうかがった方々

九州支社 物流統括部
副部長
番家謙介(ばんか けんすけ)

九州支社 物流統括部
九州南センター
センター長
由利勝昭(ゆり かつあき)

九州支社 物流統括部
九州南センター
マネージャー
布袋浩志(ほうたい ひろし)

九州2拠点体制を確立し
災害等によるリスクを分散

鹿児島県、宮崎県、熊本県の物流を担う九州南センター

 株式会社あらたでは、福岡県飯塚市の九州センター(現在の九州北センター)が九州全域の物流をカバーしていた。近年、同センターの処理能力が限界に近づきつつあり、九州にもう1カ所物流センターを建設する計画は以前からあったが、その実現を後押ししたのは、2016年4月に発生した熊本地震だった。
 「九州センター自体の被害はありませんでしたが、高速道路が寸断され、鹿児島や宮崎など九州南部への輸送は迂回路を取らざるを得ませんでした。鹿児島には九州センターから4時間かかる地域もあり、こうした自然災害によるリスクを分散する上でも、新センターを建設し、九州2拠点体制を確立する必要性がありました」。こう説明するのは、九州支社物流統括部副部長の番家謙介氏だ。
 九州南センターは敷地面積3328坪、建築面積1959坪、延床面積5080坪(3層建て)であり、同社の物流センターの中では中規模に分類される。配送エリアは鹿児島県、宮崎県の全域と熊本県の一部で、現在の出荷額は約110億円だが、今後は熊本県全域に配送エリアを広げる計画もあり、将来的には約150億円の出荷額を目指している。

価格競争が熾烈なエリア
省人化でコストを大幅削減

 同社全体の販売チャネル別売上高構成比はドラッグストアが48.7%と約5割を占め、ホームセンター16.4%、スーパーマーケット12.3%(2019年3月期)だが、九州地区はドラッグストアに次いでディスカウントストアの構成比が高いのが特徴だ。他の地区では、ナショナルチェーンの小売業のシェアが高いが(中には7割前後を占めるセンターもある)、九州地区は九州に本社を置く地元企業の取扱高が最も多い。
 九州南センター長の由利勝昭氏は、「ディスカウント業態の小売店が多く、他の地域と比べると価格競争が熾烈なエリアです。そのため、流通コストに対する要求も厳しく、より生産性を上げる努力が求められています」と話す。
 同社では九州南センターを建設するにあたり、どんなセンターにするか、議論を重ねた。その結果、最新のシステムや仕組みを全国に先駆けて導入し、その成果を他地域に波及させる実験的な物流センターにすることを目指したという。
 「コンセプトは〝省人化〟です。人手不足は当社でも大きな課題であり、人件費の上昇は、結果として物流コストに跳ね返ることになります。当センターでは最先端のロボットや自動化システムを導入することで、コストの大幅な削減に取り組みました」(由利氏)


「アイマスモバイル」が奏功
他センターでも導入が始まる

 その代表例が、ピッキングシステム「アイマス(AiMAS)」と連動させた、「アイマスモバイル」だ。「アイマス」はバーコードのスキャニング機器と重量検品カートを組み合わせた同社独自のバラピッキングカートで、全社で約2600台導入されている。しかし、カートが特定のロケーションに集中すると通路が渋滞するため、作業者は小さなカゴを手に、商品を歩いてピッキングして回らなければならない。
 同センターが初導入した「アイマスモバイル」は腕に装着して使う小型のタブレット端末で、カートを離れてもモバイル画面で作業指示を確認でき、商品や数量を間違えることなくピッキングできる。同センターのバラピッキング作業の生産性は導入直後に全国のセンターでベスト3に入り、4カ月目にはトップに立った。
この結果はすぐに他の物流センターと共有され、「アイマスモバイル」は今期中に5カ所のセンターに導入される予定だ。

腕に装着して使用するアイマスモバイル。特定のロケーションが渋滞し、カートが入れない場合にピッキング情報を転送。正確で効率的なピッキングに威力を発揮する

重量検品カート・アイマス(AiMAS)が活躍する3階のバラピッキングエリア。スキャナで商品違い、重量カートで数量違いを検知し、ほぼ100%の納品精度を実現

夜間搬入を実施
車両待機時間がゼロに

3848棚のパレット収納倉庫。レーン間移動を自動化し、
夜間の無人補充出荷が可能になった

 アイマスモバイルと並んで成果を上げているのが、物流車両の待機時間ゼロへの取り組みである。
 入荷商品の多くは指定運送業者が各メーカーの倉庫を回って集荷し、大半の車両が深夜に到着して倉庫が開く朝まで待機しているのが、多くの物流センターの実態である。九州南センターでは、セキュリティーゾーンの鍵を指定運送業者のドライバーに預け、夜間に荷物を搬入してもらう「夜間無人入庫」のシステムを導入した。ドライバーは、センター内の行先(自動倉庫、バラエリアなど)がわかるハンディ端末(HHT)の指示により、行先フロア別に荷下ろしを行う。このため、出社したセンターの社員は検品と仕分け作業を同時に行え、入庫作業もスピードアップした。
 「夜間納品の拡大によって、納品車両の待機時間はほぼゼロになり、また、当社社員が朝5時に出社して行う検品と自動倉庫への入庫作業も午前8時までに終わるようになりました」(番家氏)
 「夜間無人入庫」についても他の物流センターへの導入を進めており、すでに2カ所で稼働中だ。九州南センターでは、入庫時点で行先別に仕分けられたパレット納入の展開など、入庫作業のさらなる効率化と時間短縮に取り組んでいる。


初導入したAIデパレタイズロボット。重作業を軽減し、様々な荷姿のケースを認識し自動出庫する

指定の運送業者にセキュリティーゾーンの鍵を預け、夜間納品できるシステムを採用。ハンディ端末で格納場所を指定することで、ラベル貼付後の再仕分けが不要になった

AI搭載のロボットを初導入
全センターの生産性向上を推進

桜島の降灰によって汚れやすいオリコンを自動洗浄する装置。
脱水後に組み立てて乾燥させ、そのままコンベアに投入。
ピッキング時に組み立てる手間を省く

 省人化に向けた最先端の取り組みが、深層学習による物体認識を採用したAIデパレタイズロボットの導入である。同ロボットは高精度に荷物を識別し、エアー吸着方式で最大22キログラムまでの荷物を運ぶことができる。2機導入しており、毎時450ケース、合計900ケースの出荷を可能にし、従来は3人で担当していたケースピッキングのラインが1人で行えるようになった。
 九州南センターマネージャーの布袋浩志氏は、「様々な荷姿に対応するロボットであり、生産性は格段に向上しました。ただ、現在の段ボールケースは人間が運ぶことを前提に設計されており、縦長で重量があり、形が変則的だったりすると、ロボットでは吸着できないこともあります。今後は業界をあげて、ロボットピッキングを前提としたケース設計を検討する機会になればよいと考えています」と話す。
 このほか同センターでは、物流ラベルの全自動貼付や、オリコン洗浄機と連動したバラフロアへの空オリコン供給コンベア、メーカーチェンジが音でわかる機能を搭載した返品用ピースソーターの導入など、新たな取り組みを行っている。
 「当センターで初めてチャレンジしていることが多く、まだまだ試行錯誤が続いていますが、自動化のパイオニアとして、ここから全国に情報発信していきたいと考えています」(由利氏)
 現在、同社では首都圏に出荷額400億円規模の物流センターの建設を計画している。そこでは九州南センターでの成果を反映させたシステムや仕組みが積極的に導入される。稼働から1年、物流センターの近未来モデルでもある九州南センターは、あらた全体の生産性向上に大きく貢献しようとしている。

株式会社あらた 会社概要

本社/東京都江東区東陽6丁目3-2
イースト21タワー
設立/2002年4月
資本金/8,568百万円
売上高(連結)/754,447百万円
従業員数(連結)/3,016人
事業内容/化粧品・日用品・家庭用品・
ペット用品等の卸売業
W e b サイト/http://www.arata-gr.jp
※2019年3月末現在

「あらた九州南センター」概要

所在地/鹿児島県鹿児島市七ツ島
2丁目1-13
規模・構造/3階建て・鉄骨造
敷地面積/3,328坪
建築面積/1,959坪
延床面積/5,080坪
開設・稼働/2018年6月