岩手では、盆踊りといったらなんといっても「さんさ踊り」だろう。お腹に大きな太鼓をつけた勇壮な太鼓役と華麗な踊り手との一斉群舞は、夏の風物詩ともなっている。
もっとも、最大のイベント「盛岡さんさ踊り」は、お盆とは関係ない8 月 1 〜 4日に行われている。神さまが鬼を追い払ったのを喜んで踊ったという起源伝説もあって、盆踊り感は薄い。けれどもお盆の時期になると、あちこちでさんさ踊りが見られるのも事実だ。
盆踊りというのは、本来は死者を供養するための芸能である。さらには、供養されない無縁仏や餓鬼などを放っておけば悪事をなすという理由で、これらを楽しませて送り出すという機能もあった。だからこそ、悪いものを村境まで送り出すために、地区ごとに踊っていたわけである。
それゆえ本来はさんさ踊りも、地区ごとに踊り方がばらばらであった。しかしそれでは、街なかで大勢で集まって踊ることはできない。それで踊り方を統一した「統一さんさ」が作られ、現在の「盛岡さんさ踊り」はこの統一さんさが踊られている。
一方で、各地区の個性ある踊り方は、「伝統さんさ」として競演時間を設けるなど、大切に継承されている。
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盛岡さんさ踊り
■開催日:8月1〜4日 ■開催地:岩手県盛岡市(中央通会場・盛岡駅前・盛岡市民文化ホールなど)
■アクセス:交通機関、地図などは右記サイト参照 http://www.sansaodori.jp/info/access.php
監修・文 久保田裕道 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長。
著書に『日本の祭り解剖図鑑』(エクスナレッジ)、 共著に『民俗芸能探訪ガイドブック』 (国書刊行会)など。