インバウンド研究会のご紹介
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当社は、インバウンド(訪日外国人観光客)についての知見を広め、消費財流通業界における実状と課題を認識し、どう活かすのかをユーザーのみなさまと共に検討・研究する場として、2016年8月にインバウンド研究会を発足させました。当研究会のあゆみと今後についてご紹介します。
(PLANET vanvan 2017年秋号(Vol.116)掲載記事より)
プロモーション戦略を練り、展示会で効果を検証
▲研究会の様子
インバウンド研究会は、少子高齢化が進む低成長期の日本において、数少ない成長要因のインバウンドによる消費を通じ、消費財流通業界の活性化、業界全体の成長に寄与する施策の研究を行うために設立されました。2017年3月までの第1期の参加企業は以下の通りです。
第1期インバウンド研究会 参加企業(メーカー8社、卸売業3社、企業名は五十音順に記載)
・メーカー : エステー株式会社、株式会社エフティ資生堂、花王株式会社、コーセーコスメポート株式会社、サンスター株式会社、日本製紙クレシア株式会社、ライオン株式会社、他1社
・卸売業 : 株式会社井田両国堂、中央物産株式会社、ハリマ共和物産株式会社
なお、当研究会は、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 専務理事 事務局長として活躍中の新津研一氏が代表取締役社長を務める株式会社USPジャパンにコーディネートを依頼しています。
2016年8月から2017年3月までの期間に全4回開催された第1期では、日本の消費財の素晴らしさを業界全体が連携してプロモーションを行うことが重要という前提に基づき、座学による最新知識の習得に加え、中華圏・タイ・欧州出身の外国人留学生が参加した複数回のワークショップを通じ、訪日外国人に対するプロモーション戦略を立案しました。
さらに、研究会参加メンバーが外国人に実際に接し、事前に立てたプロモーション戦略の効果を検証する機会として、日本好きの外国人に人気のイベント「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL」※に「日本女子の美の秘密」というテーマでブースを出展し、来場者の反応を体感しました。
※日本のポップカルチャーを世界へ発信するプロジェクトの活動の一環として、世界各国で開催されているイベント。
また、P.4〜7で当日の様子をご紹介している6月21日のインバウンドセミナーでは、第1期インバウンド研究会の参加メンバーが活動報告を行いました。以下、そのエッセンスと各回の活動をご紹介します。
50カ国以上の外国人がアンケートに回答
アンケートに回答している来場者
ブース来場者を対象にアンケートを実施したところ、53の国・地域から来場した外国人485名、日本人290名、合わせて775名に回答いただきました。
(外国人来場者の内訳)日本在住:378名、訪日:86名、不明:21名
展示していた39商品の中で気になった商品については、外国人と日本人とでは興味のある商品が異なっていたほか、同じ外国人でも訪日した方と日本に在住している方では、嗜好が異なっていました。
訪日・在住ともに人気があったのは、朝用、ピンポイントで使うものなど、手軽で便利な商品で、訪日外国人には、お土産・ショッピングリストの定番や、個々のパーツを重点ケアでき、パッケージを見ただけでどのような用途なのかがわかるものが人気でした。
一方、パッケージがシンプルな商品でも、実際に使ってみせると興味を持っていただけましたので、使用方法を紹介する動画の有効性が感じられました。
ブースで知って自分で使ってみたい、もしくは人に薦めたい商品について聞いたところ、商品名を覚えてもらうのは難しいようで、カテゴリやメーカー名、そして見た目の可愛さで判断することが多い様子が伺えました。
約200名の来場者がメイクアップを体験
メイクアップ体験中の来場者
ブースに来場した方がメイクアップを体験できるよう、ブースに椅子3脚とテーブルを設置し、美容のプロが待機したところ、2日間でおよそ200名の方々に体験いただきました。メイクに大喜びのインド人女性から、最初は躊躇していながら最終的には乗り気になった欧米系女性、メイク後に喜んで記念撮影をする英国人女性、メイクに使った商品が気に入って、商品を撮影する中国人女性、さらには果敢にメイク体験をするアラブ系男性まで、みなさまに喜んでいただけました。
美を求める気持ちは外国の方々も日本人も同じであることがわかり、実際に外国の方々と話すことの大切さを感じました。
【 第1期研究会の活動 】
第1回研究会
2016.08.02(火) 14:00〜17:30
1.講演
(1)「ビッグデータからみえるインバウンド需要の動向」
カスタマー・コミュニケーションズ株式会社(現株式会社True Data)執行役員 企画本部長 越尾由紀氏
(2)「インバウンド消費〜その実態と可能性〜」
一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 専務理事 事務局長/株式会社USPジャパン 代表取締役社長 新津研一氏
2.ワークショップ
中華圏・タイ・欧州出身の外国人留学生を招いて出展予定イベントのプロモーション施策を検討し、テーマを「美白」「ビューティケア」「日本の女の子」に決定。
第2回研究会
2016.09.27(火) 14:00〜17:30
1.新津研一氏講演 「前回の振返りとフェスティバル出展に向けて」
2.ワークショップ 中・タイ・仏出身の外国人留学生を招き、ブース来場者のリサーチ、商品紹介、プロモーションについて検討。
第3回研究会
2016.11.26(土)〜27(日)、東京体育館で開催された「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL 2016 in TOKYO」にブース出展
1.出展目的
実際に外国人と接し、外国人のインサイトを知る。外国人の心に響くPR手法や言葉、接し方を体感する。
共同PRを通じて外国人に日本製品の質の高さ、きめ細やかで豊富なラインナップを伝え、高品質な製品を体験してもらう。
来場者にSNS発信をしてもらうと同時に、来場者を対象としたアンケート調査を行う。
2.ブース概要
(タイトルは"KAWAII ROOM"~ experience a secret of Japanese Girls' Beauty~日本女子の美の秘密を体験しよう!)
「日本女子の美の秘密」というテーマで、朝と夜にどのような商品を使ってケアしているか、2枚のパネルで訴求。朝はすぐ外出するための「時短美容」、夜は何かをしながら使える「ながら美容」。また、各テーマに該当する商品計39アイテムを、日英並記の商品説明を添えて陳列。
3.アンケート
日英2種を用意した回答用紙と引き換えに、商品サンプルの詰め合わせを渡す。
4.集客
メイク体験スペースとしてブースに椅子3脚とテーブルを設置し、美容のプロが待機。
撮影スペースや小道具を準備し、SNS発信を促した。
第4回研究会
2017.03.08(水) 14:00〜17:30
展示ブースの様子
1.第1~3回の研究会を振返って
2.新津研一氏講話 「インバウンド市場の現況と最新情報」
3.ワークショップ
出展準備から仮説・効果の検証までをテーマとして、グループディスカッションを実施。
(1)仮説の検証
I.プロモーション
<評価>
・ブースデザインが来場者層の嗜好とマッチし、大好評。
・メイク体験が予想以上の効果(約200名を集客)。
<反省>
・ブースコンセプトが来場者に伝わるよう、パネル表記を要工夫。
・メイクの”Before/After“を使ってSNSへの拡散促進を行うべき。
II.多言語対応、ブース運営
<評価>
・片言の英語でもコミュニケーションできた。
・外国人の来場者が、しっかりと商品説明を読んでいた。
<反省>
・商品説明の文字表記が小さすぎた。
・アンケートや商品説明には、中国語(簡体、繁体)表記も必要だった。
・外国人へどう声を掛けるか、事前に決めておくべきだった。
・展示商品が多すぎた。
(2)効果の検証
I.アンケート分析
<結果>
スキンケア志向と想定していた外国人も、メイクに興味があることが判明した。
<反省>
当日は回答をより多く集めることが目的になってしまい、商品選択に関わる悩みを聞くまでに至らず。深い話が聞ける工夫が必要だった。
II.SNS分析
・多くの来場者がブース内で自撮りしていたが、ハッシュタグを付けたSNS投稿のお願いを十分に周知できなかったため、効果を検証できなかった。
III.参加者の気づき
・日本製品の信頼性の高さ、日本文化の人気を再認識した。
・訪日外国人が日本の流行や人気商品などの情報を求めていることがわかった。
・1社では実現できないブース提案ができたのは、共同プロモーションのなせる技。
第2期研究会が活動中
2017年8月から、第2期インバウンド研究会が始まっております。第2期では、第1期の知見に基づき、“インバウンド顧客に「届ける」~プロモーションの研究”、“インバウンドの実状を「知る」~インバウンド先駆者と先行事例の研究”の両テーマに取り組みます。前者に関してはフィールドワークも予定しています。第2期研究会の成果につきましては、後日改めてご報告する予定です。
お問い合わせ先
株式会社プラネット
マーケティング&イノベーションユニット
E-mail :ri@planet-van.co.jp