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玉生弘昌(名誉会長)の読書

P&G式 世界が欲しがる人材の育て方 (和田浩子著、ダイヤモンド)

 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は世界最大の日用品メーカーで、優れたマーケティング力を持ったエクセレントカンパニーとして有名であるが、人材バンクとも言われ多くの優秀な人材を世に送り出している。また、日本では女子学生がもっとも入社したい企業のひとつと評価されている。

 本書の筆者である和田浩子氏が入社した当時(1977年)は、P&Gサンホームという名称で、日本サンホームの経営資源を多く引き継いでおり、日本的経営風土が色濃く残っていた時代である(日本サンホームはミツワ石鹸、旭電化、第一工業製薬による共同出資企業)。

 和田氏はバイリンガル・セクレタリーとして入社するはずが、マーケティング部に配属され、アシスタントとしてお茶汲みも経験している。しかし、「なりたい自分になるために自分なりの美学」を持っていたため、次第にキャリアアップし、ブランドマネジメントのエースとして多くのブランド育成に成功し、とうとう副社長にまでなった。そして、P&Gを“卒業”した後、ダイソン日本支社代表取締役、日本トイザらス社長などを歴任した。

 ちなみに、和田氏のなりたい自分は「Work HardではなくWork Smart」だそうで、小柄であるが眼に力のあるまさに「Smart」な人物である。

 和田氏の活躍の経緯を読んでみると、国際的企業らしいダイバーシティー(相違、多様性)を容認する組織風土の中で、P&Gに育てられたというより、自身の心がけと努力によって大きく育ったのではないかと思われる。

 本書で、P&Gには育つチャンスがたくさん用意されていることが紹介されている。マネジャーになった人は、部下の育成が仕事の多くの部分を占めていること、そのためのトレーニングガイドブックがあること、様々な研修やチームによる切磋琢磨などが解説されている。

 企業人として参考になることは、P&Gでは身につけるべきスキルとして「リーダーシップ/実行力/優先順位をつけて仕事をすること/クリエイティブ力/他人との効率的な協働/戦略的思考と問題解決力/コミュニケーション力」を挙げ、明文化して社員に提示していることである(この7項目は更にレベルアップされているが、詳しくは4章に記述されている)。

 “仕事を覚えろ”と言う、よくありがちな単純OJTではなく、人間としての成長を促す哲学があることは見習うべきである。

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