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玉生弘昌(元会長)の読書

残業ゼロの人生力 (吉越浩一郎著、日本能率協会マネジメントセンター)

 前トリンプ社長の吉越浩一郎氏の前作「残業ゼロの仕事力」は30万部ものベストセラーである。そちらは会社経営について書かれているが、本書「残業ゼロの人生力」はリタイア後の生き方について示唆を与えてくれる。

 リタイア後の時間は余生ではなく「本生」と呼ぶべき最も重要な時期であると冒頭で定義している。その時期をいかに有意義に過ごすかが人生の価値を決めるというわけである。

 そのためには、現役時代から準備をしておくべきだと論じている。滅私奉公的なサラリーマン時代を過ごすと、「自立した個」を確立できない。「仕事力」で自分の時間を持たなければならないと述べているが、残業と付き合いに大事な時間を浪費していては、個を確立することができず、退職後の「本生」を豊かなものにすることは不可能だと指摘している。

 印象に残ったのは“仕事の反対は、ヨーロッパ人は遊び、日本人は休み”というくだりである。ヨーロッパ人は切り換えて上手に遊ぶが、日本人は“仕事を休む”のであって、いつも仕事から離れられないでいる。フランス人を伴侶としている吉越氏は、ヨーロッパとの仕事感の違いを体験として語っていて、説得力がある。

 ところで、吉越氏は背丈は180センチ以上もあるという男性的で快活な人物である。その吉越氏が、なぜ女性用下着の仕事に就いたのか、それが好きだったのだろうか?  実は、女性下着メーカーのトリンプは彼にとって3度目の会社である。その点、吉越氏は「私にとってビジネスはゲーム以外のなにものでもない」と明言していることから分かるとおり、たまたま女性下着会社の社長になったものと思われる。吉越氏は非常に有能な組織運営者で、他の会社でもきっと成功したであろうプロの経営者であると理解することができる。

 経営者には色々なタイプがある。例えば、本田技研工業の創業者本田宋一郎は機械作りが好きで、生涯をホンダに捧げた。と言うより、好きな仕事を生涯続けた。本田氏にとっては、リタイア後の第二の人生はなかったと思われる。

 心底好きな仕事に就ける確率は低く、普通のビジネスマンはたまたま出会った仕事に就く。たまたま出会った仕事に強いモチベーションを持って楽しくやるには、ゲームだと割り切る。これは賢明なやり方である。

 だからこそ、退職後の「本生」を大事にしなければならないということである。本書を参考に、意義ある人生を送りたいものである。

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