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玉生弘昌(元会長)の読書

ザ・プロフェッショナル (大前研一著、ダイヤモンド社)

 プロフェッショナルとは深い専門知識があり、一般人が容易にできない仕事を成す人のことだと思うが、著者はさらに強い使命感と倫理観が必要だと主張している。

 第一章で、医者の誓いである「ヒポクラテスの誓詞」の内容である「医の実践を許された私は全生涯を人道にささげる」から「人道に反した目的のために我が知識を悪用しない」までを引用している。医学生にこれを誓わせる医科大学もあるそうだ。

 思えば看護師は卒業式である「帯帽式」において献身的に病人を介護することを誓っている。

 仕事とは、人類が集団生活を始めて以来、他人の役に立つサービスをし、その対価を得ることである。しかし、社会が複雑になるに従って、組織が発達し、組織の一員として仕事をするようになる。誰のために役立とうとしているのか、最終ユーザーは誰であるかを見失ってしまう。

 その結果、評論家のようなサラリーマンとなり、真の実力を持たない人たちが増える。多くのサラリーマンたちは会社組織から離れると社会に通用しない。つまり、プロではないのだ。だから今こそ、プロフェッショナル論が必要な時なのだろう。

 大前研一氏は実力のある国際派として知られており、米IBMのルイス・ガースナー前会長、GEのジャック・ウェルチ前会長、「iPod」を生み出したアップルのスティーブ・ジョブズCEO、そしてソニー創業者の盛田昭夫氏、さらにはシンガポールのリー・クアンユー顧問相などと直接会話してきた経験を元に、彼らがなぜプロフェッショナルなのかを紹介している。

 まず、彼らが質問好きで知りたがり屋である点を上げる。そして、全身全霊を傾けてビジネスを成功させようという強い意欲(というより強い性格)がプロフェッショナルとならしめていると記している。

 全編を通じて、世界の企業の栄枯盛衰の事例をちりばめ、その経営者について言及している点は、非常に勉強になる。日本の例では、アスクルを取り上げて、いかに伝統的な既成概念を脱し、新たなビジネスモデルを構築したかを紹介している。

 第四章の「議論する力」では、ロジカルシンキングを身に付け、徹底的な議論をすることが重要であり、詭弁を見抜き排する必要性を唱えている。ロジカルシンキングは先天的なものではなく、各自の努力で身に付くものであるとも述べている。平明で読みやすいわりには中味が濃く、おすすめしたい本である。

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