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玉生弘昌(名誉会長)の読書

FACTFULNESS (ハンス・ロスリング他著、日経BP社)


 世界で100万部も売れているベストセラーである。
 著者のハンス・ロスリングは、世界的に活躍した医者で、多くの国々の健康状態や暮らしぶりを見ているわけだが、それに対して、文明国の人達の認識がかなりずれていることに気付いて、本書を著わした、ということである。
 その認識のずれを、指摘しながら解説をするというクイズ方式で本書は構成されている。
 世界の人口のうち極度の貧困の割合は? 世界の一歳児のうちワクチンを受けている割合は? などなど、多くの質問が投げかけられている。
 世界で「貧困層が増えている」という一般認識に対して、実際(Fact)は、世界人口の貧困割合は縮小していること、「女性の教育機会が少ない」という認識に対して、実際(Fact)は多くの女性が教育を受けていること、医療も行き届くようになり一歳児がワクチンを受けている割合は80%に達していることなどを記述している。
 このような認識のずれが生じるのは、思い込みの「本能」があるからだと論じている。
 自分たちと他の人達のように分断して考える「分断本能」、悪いニュースに影響されやすい「ネガティブ本能」、物事は直線的に続くと考えてしまう「直線本能」、稀にしか起こらない危険が世界に伝達されるようになり人々が多くの恐怖を知ってしまった「恐怖本能」などのを、10の「本能」をあげている。「過大視本能」の章では、2016年に420万人の赤ちゃんが亡くなっていると言うと、実にたくさんと思い込んでしまうが、1990年に亡くなった赤ちゃんの数は1400万人で、1000万人も減っているという事実(Fact)を挙げている。
 そして、物事を正確に把握するには比較が大切だ、などと記述している。

 本書は、世界の現状を知るには面白い本だとは思うが、世界中の誰もが間違った認識をしているわけではない。著者はスウェーデンで生まれた白人で、白人社会での認識の間違いを指摘しているように思われる。
 日本の知識人は必ずしもこのように思っていないのではないだろうか。現代社会では、商業主義的なマスコミが発達していて、大衆迎合的なニュースの配信が優先されている。そのようなニュースに触れた場合、何らかのバイアスがかかっているという疑いの眼を持って接する必要がある。日本の知識人はそのような眼をもっている人が多く、本書についても俯瞰的に読むことだろう。

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