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玉生弘昌(名誉会長)の読書

妻のトリセツ (黒川伊保子著、講談社α新書)


 この本が売れているそうだ。結婚生活40年ほどの中高年には、とっても気になる本なのであろう。
 近頃、妻の態度が気になる、退職金が出たら離婚したいと言い出すのではないか、等々、すこしでも思っている人はたぶん大丈夫だろう(=評者の私見)。妻の態度の変化にまったく気が付かない人が危ないのである。
 実際にあった話だが、会社の営業マンとしてバリバリ働いて毎日アルコールの匂いをさせて深夜に帰宅、子育てのことも妻が昼間何をしているかも全く考えたことがない人が、定年を迎えた日、帰宅すると部屋がきれいに片付いていて、「離婚しましょう」と切り出されたそうである。「私の務めは十分に果たしました。もうあなたの面倒は見ることはできません」と言われ、退職金は折半することになったそうだ。

 本書は、いわゆる“男性脳と女性脳との違い”について多く述べている。女性脳は古いことをいつまでも覚えている。夫のちょっとしたいやな行為、例えば靴下を脱ぎっぱなしにすることを、一滴一滴コップに水を入れるようにためて、ある閾値いきちを超えると一気に爆発する。夫としては、いつものように靴下を脱いだだけなのに妻が怒り出すことに理解ができない。
 夫が言ってはいけない禁句が色々と書かれている。妻を絶望させるセリフの代表格は「言ってくれれば、やったのに」だそうだ。これは、察してくれていないからであり、すなわち「僕はあなたに関心がない」「あなたを大切に思っていない」と同義語なのだということである。
 「だったらやらなくてもいいよ」は「いつもやっていることは大して重要ではないので、やらないでもいい」と聞こえるので禁句。妻の愚痴に対して「つまりこういうことだろう」も禁句、愚痴は聴いてくれるだけでいい、まとめてくれたり解決策を提示してくれなくてもいい。
 禁句はたくさんあるようだが、本書では原則論をまとめてくれている。女の通信回線には「心」と「事実」の2回線あり、「心」を肯定するのが重要だと書かれている。「それは、大変だったね、悲しい思いをしたんだね」とまず「心」の回線を通じさせ、その後に「でも、そうしなかった方が良かったね」と「事実」を述べるのがいいということである。
 どうやら、このあたりが「妻のトリセツ」の肝のようだ。

 最後の章に、妻と別れた夫は長生きできないと、恐ろしいことが書いてある。妻と離婚あるいは死別した男性は、病死・不慮の事故・自殺の比率が高いのは統計が示している事実。特に、糖尿病と肝疾患は8~10倍も高いということである。
 頼りにせざるを得ないのだから、大事にしなさい、ということである。

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