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玉生弘昌(名誉会長)の読書

いい会社をつくりましょう (塚越寛著、文屋)

 ヒット商品“かんてんぱぱ”で有名な伊那食品工業の塚越寛会長から、この本をいただいた。見ると本書は2004年に初版が出版され22刷、2012年に改訂版が出され3刷も発行されている。けっこうなロングセラーである。

 伊那食品工業は、ユニークな経営をしているとの評判であったため、一度訪問をしたことがある。長野県伊那市西春近(広域農道沿い)いう山間部にある。しかし、訪れると、綺麗に整備された敷地の中に建物が点在し、まるで公園のよう。ヘルシーな食事を出すレストランもあり、今や観光地のようになっている。

 もともと、寒天は文字の通り、原料は南方の海産物(天草)なのに寒冷地で一旦凍結させるという工程があるため、この立地になっているようだ。

 塚越会長は「単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社をとりまく総ての人に『いい会社だね』と言ってくださるような会社にしたい」という思いを持っている。「会社は社員の苦労に報いるために、発展し、利益を生まなければならない。会社の発展を通して、社員が皆、幸せになり、社員の幸せを通して社会に貢献するべきだ」として、何よりも、社員の幸せを願っているということである。だから、わが社には労働組合がない。もしあったら、自分が委員長だと、話してくれた。

 会社の敷地では、社員たちが一生懸命掃除をしている姿を目にすることができる。彼らは、率先して樹木の剪定をし、地面の落ち葉を掃き清めている。来社した人たちにいい会社だねと言われるためだ。中には、休日に掃除のためだけに出社してくる人も多いそうだ。大切にされている社員は、よく働く。

 適切な成長を続け年輪のように年を重ねる成長が望ましいと書いている。また、寒天が健康にいいとして一時ブームになったが、むしろそのような急な成長は望むところではないとも言っている。

 目を開かされたのは、「会社のコストは他社の売上」なのだと言うところである。日本中の会社がコスト節減をしたら、経済全体が縮小してしまう。取引先にも幸せになってもらわなければならない、安いからと言って取引先を簡単に替えるべきではないとしている。

 よく働く社員によって、伊那食品工業は成長しているだけではない。原料を世界各国に求める活動をしているし、製品の輸出も多い、また、研究開発にもかなり力を入れている。その結果、長い間増収増益を続けている。やはり、この会長はタダモノではないようだ。

 この錦秋の時に、伊那谷を再び訪れてみたくなってきた。

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