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玉生弘昌(元会長)の読書

アメリカは日本経済の復活を知っている (浜田宏一著、講談社)

 浜田宏一は内閣官房参与として、アベノミクスの指南役となっている。普段はイェール大学名誉教授としてアメリカで活躍している経済学者であるが、一説によると、日本人初のノーベル経済学賞候補とも言われている。

 日銀総裁の白川方明は、浜田の教え子である。優秀だった白川が日銀総裁になってから、「歌を忘れたカナリヤ」のようになり、日本経済のデフレ脱却に対して誤った政策を続けていることを嘆いている。菅内閣が発表した「円高対応緊急パッケージ」は、経済学の常識から見て誤りだらけだと指摘。政府の閣僚は経済についての素人ばかりで、適切な対策が何であるかを判断できていないと論じている。

 アメリカとイギリスは的確な判断で大幅に貨幣の供給量を増やし、リーマンショック以前の水準に戻ったのに、日本だけは日銀の誤った政策で、円高とデフレに陥り低迷していた。進歩した経済学を学び、適切な経済政策が必要だったのである。

 ようやく、2012年2月14日(バレンタインデー)に日銀は1%のインフレを目途とする発表した。これによって、円安が起こり株価も上がった。しかし、チョコレートをあげると見せかけただけだったことが分かるにつれて、さらに悪い状況に戻ってしまった。

 安倍晋三が政権を取り戻す見込が出てきた時点で、一気に雰囲気が変わって来た。本格的に円高対策とデフレ脱却を目指すというメッセージが世界に伝わり、まだ何もしないうちに円安が起こり、株価も上がった。世界は思惑で動くのである。

 とにかく、現代経済学では「金融政策は物価や為替に効く」というのは常識なのである。経済学は200年の歴史の中で進歩してきたのである。だが、日本では政治家もマスコミもその常識を持っていない。そういえば、舛添要一が国会の質問で、「日銀法の改正が必要だ。少なくとも現在の経済学を反映した内容にしなければならない。」と発言していた。どうやら、現代の経済学が日本では認知されていなかったようだ。

 世界一の海外資産を持っている日本経済が輝かないはずはない、という浜田のコメントに心強いものを感じる。日本復活を信じたい。

 たとえ話が多く読み易い。また、多くのキーパーソンの名前が出てきて、どのように経済政策論争が推移してきたかがもよく分かる。 いま、この転換期に是非読んでおくべき一冊である。

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