株式会社プラネット

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玉生弘昌(元会長)のエッセイ

株式公開(IPO)は勲章

 株式公開(IPO)は、起業家にとって大きな勲章である。
 自分の始めた事業が、日本の経済社会の中で認められて、証券取引所で自分が発行した株式が売り買いされるようになるのだから、大したことなのである。一生のうちで何度もあることではない。
 ところが、幸いなことに私はいくつものIPOに関わったことがある。
 まず第一は、私が創業した株式会社プラネット(証券コード:2391)を2004年にジャスダックに上場させた。まだ、売上も利益も小さかったのだが、何しろユーザーすべてが優良顧客で、着実に売上が上がり、利益も間違いなく生まれるというめったにないビジネスモデルであることが評価されてIPOが許されたのである。おかげさまで、今日まで安定した経営を続けることができている。
 次は、アイスタイル(証券コード:3660)である。まだ若かった創業者の吉松徹郎氏と山田メユミ氏が自己資金で会社を作るというので、応援してあげたくなってしまった。アイスタイルは@cosmeという化粧品の口コミサイト運営会社である。当時はそんなものがビジネスになるのかと言われていたが、インターネット時代の到来によって成功した。2012年のIPOに際しては直接面倒を見たわけではないが、顧問として支援をした。吉松社長の依頼で、私と慶応大学の国領二郎教授とが顧問となり、いまだに顧問をしている。
 3番目はサイエンスアーツ(証券コード:4412)である。創業者の平岡秀一氏は、日立製作所の社員だったのだが、早期退職して、マイクロソフトの元代表の成毛眞氏と仕事をしていた。その後、独立して会社を作った。しかし、当初扱っていた韓国製のハイブリッドデータベースの販売はうまくいかず困っている様子を見て、支援をしてあげることにした。そして、その数年後に「バディコム」というインターネットによるトランシーバーのような製品を開発して売り出したところ、大ヒットし、JR、JAL、ドン・キホーテなど大企業に次々と売れるようになった。そして、2021年11月にIPOを果たし、一時は1万8千円ほどの株価がついて、注目された。ただのトランシーバーではなく、音声をAIによって解析ができるという特性を持っている。また、売り切りではなく、サブスクモデルにしている。平岡社長は発明の才があるだけでなく、ビジネスの在り方についても知恵がある男である。いまのところ、オンリーワンの製品であるため、大きく成長する可能性がある。
 4番目はTrueData:トゥルーデータ(証券コード:4416)である。2021年12月にIPOした。この会社は、私が最も力を入れて育成した会社である。2008年に三菱商事の社内ベンチャーであったカスタマー・コミュニケーションズという会社をプラネットが買収し、三菱系から離脱して事業を開始した。しかし、なかなかうまく行かず困っていたところ、組織的問題があることに気づき、やむなく社長を現在の米倉裕之社長に交代させた。さらに社名をTrueDataに変えたところ、数年かかったがなんとか軌道に乗り、売上が大きく伸びるようになった。米倉社長は、東京大学卒業後、東京海上に就職、さらにGEコンシューマー・ファイナンスに転職しアメリカで活躍した後帰国して、ぐるなびの執行役員となっていた。その彼が、ぐるなびを辞めてTrueDataに来てくれた。さすがに、優秀で、組織運営者としても、経営戦略立案についても秀でた着眼と企画を生み出してくれている。世界最大の調査会社ニールセンが資本業務提携をするなど、各方面から評価がされるようになった。TrueDataには、日本で一番のID-POSデータを保有しているという優位性があるため、これから一層飛躍する可能性が大きい。
 もう一つ、IPOに関わったわけではないが、プラネットはTIS(証券コード:3626)の株も保有している。これは、インテックが通信関係の事業を分社化し、インテック・コミュニケーションズという会社を作った際に、出資したものである。その後、インテックがこのインテック・コミュニケーションズを合併吸収したため、株価がインテックの株価に持ち上がった。さらに、インテックはTISと資本提携したため、TIS株になった。設立時の出資であるから額面での取得であるため、10倍以上の評価額となっている。
 このようにプラネットがいくつもの会社のIPOに関わるなどして、会社の規模の割には多くの株を保有している。いずれも創業時に出資しているため、少ない出資金で大きな含み益を得ているわけである。一般投資家にとって、株式上場前の株を持つことは夢なのであるが、なかなかそういうチャンスはない。1985年に創業したプラネットはITベンチャーにとっては、一つの理想のモデルなのであろうか、多くの起業家が訪れてくる。そのため、上場前の株を取得する機会があったのである。

 プラネットの純利益は5億円弱であるが、その何倍もの株式を保有しているという優良会社となっている。この財務内容を背景に20年間も連続増配を続けているのだが、2021年末のサイエンスアーツとTrueDataのIPOでさらに財務内容が充実することとなった。

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