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会長の読書(旧「社長の読書」)

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なぜ日本は変われないのか
(山本 七平著、さくら舎)

  アジアの国々が躍進を続ける中、日本は変わることができない構造を引きずっている。「日本中枢の崩壊」(古賀茂明)では、官僚機構に問題があり、変われないのだとしている。円高環境や財政赤字さらには日本銀行の政策に問題がある、あるいはマスコミが悪いという論者もいる。
 山本七平は、何というのだろうか。
 山本七平といえば、「日本人は水と安全はタダだと思っている」で有名になった大ベストセラー「日本人とユダヤ人」の編者(≒著者)である。今回の書も、民族としての特徴を論じ、日本人の心情と行動様式を説明し、実に秀抜な日本人論を展開している。ただし、まさに山本流で、人口減少・財政赤字・円高などの話は一切出てこない。

   民主主義と対置するものとして、官憲主義と全体主義を同一に論じる向きがあるが、官憲主義と全体主義とはまったく別なものであるいうところから、本書の論が始まる。官憲主義は一部の選ばれた集団以外の国民は非政治的存在とされるが、全体主義は国民すべてが政治的存在とされる体制であると説明している。しかし、一般には混同されていて、議論のすれ違いが起こる。その事例として、韓国の作家金芝河が時の朴正熙大統領の弾圧を受けた事件について日本ペンクラブの代表で訪韓した藤島泰輔の発言が物議をかもしたことを挙げている。
 藤島泰輔? 覚えている人は少ないと思うが、「孤独の人」でデビューした作家である。実は、私の両親が泰輔の父親藤島敏男(日本銀行監事)と親しかった関係でデビュー前から知っていたため、突然名前が登場して驚いた。しかし、一般には藤島泰輔の名前もこの事件も記憶している人は少ないのではないだろうか。山本は官憲主義と全体主義を把握するのにうってつけの事例と考え取り上げたのだろう。
 本書では、こうした事例が他にも出てくる。山本としては適切な事例と考えているのだろうが、わからない人も多いと思うが、さすがに、深いところにまで目が行き届いているともいえる。
 そして、山本は全体主義的な総政治化と非政治化が交互に起こるという不思議な循環が日本社会を動かしているということを、天皇機関説や太平洋戦争、安保闘争などを例に引いて指摘している。
 第四章に至って、ようやく日本がなぜ変われないかが見えてくる。たとえばアメリカでは、組織はあくまで組織(システム)であり家族ではない。組織は目的を持ち、組織には絶対性がない。組織が機能しなくなれば解体され、要員は別の組織に移動する。したがって、組織である企業の盛衰は激しい。 一方の日本においては、外観は組織であっても家族的な集団である。家族は存続することが第一の目的となる。総政治化と非政治化の不思議な循環と日本人の組織観がどうつながるか、私の読解力不足のためか、理解できない部分があるが、日本人の集団における行動様式が、変化を遅いものにしているということなのだろう。
 最後に、伝統に基づき混乱の少ない変革を模索しなければならないと結んでいる。

以上

[ 2011年12月28日 ]

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