第1章 化粧品日用品物流改革の必要性とその効果

 第2部では、第1部で割り出した中間拠点となる物流センターはどうあれば良いのか検討を行った。

 ここでいう物流センターは単純化されたモデルであり、メーカー⇒中間拠点(卸売業)⇒小売業という流れのみを取り扱った。現実には他にも中間拠点があったり、別の組み合わせがあるが、ここでは単純化したため、あえて触れないこととした。

 検討にあたっては単なる理想論ではなく、現状のメーカー・卸売業・小売業間における商流・物流上の諸々の問題点、課題を踏まえて現実をより理想的なものへ近づけるために何が問題で、どうすれば良いかについても考察を加えてみた。

 検討過程ではかなり難解な問題もあり、充分詰めきっていない部分もあるが大枠の考え方、まとめについてその結果を報告する。


1-1 業界の物流事情

 化粧品日用品業界の物流は、今も激しく変化を続けているといえよう。大手・中堅小売業からのセンター一括納品、カテゴリー別納品、或いは欠品ゼロ、ノー検品など、高機能・高精度の物流サービスの要求は加速度を増し、それに対応する卸売業・メーカーの物流作業やコンピュータシステムのレベルは、限界に近いといわれるほど高度なものへと変化してきている。このような物流システムの高度化は、このこと自体は大いに評価すべきことではあるが、その一方では、今後差別化の域を越え追随できない企業や業界を生むことにもなりかねない。もう少し具体的に言えば次のような新たな課題を生み出す可能性も秘めている。
物流先進企業は目標を達成し、そうでない企業は対応できない状況が生まれ、企業間格差や業界間格差が一層拡がる
あまりにも部分最適によるコスト削減ばかりが先行し、それを達成するためにかえって非効率の部分が生まれ、サプライチェーン全体としては効率が上がらなくなる
特定の小売業のニーズに対応するためのコスト増加分がそれ以外の小売業へのサービス向上を阻害する可能性がある
標準化されていない方法がローカル・ルールとして採用されてしまい、卸売業、メーカーはそれぞれに個別に対応せざるを得なくなる
結果として小売業・卸売業・メーカーの連携がなく、お互いの効率が悪くなってしまう
各々の物流処理方式の評価基準がなく、新規計画(新物流システムなど)が常に試行錯誤となる
 これらのほかにも数多くの問題・課題が存在する。これらの問題・課題を現状のまま放置すれば、状況は一層深刻化するであろう。