| 物流機能のみに着目
業界サプライチェーン・モデルは、物流の機能のみを扱っている。例えば、中間物流拠点は、全国の生産地から運ばれてくるケース単位の商品をとりまとめ、需要にあわせてバラ単位に加工し、店舗別に仕分けし、需要の変動を緩衝するために在庫をもつという機能をもつことが規定されているのみで、誰がどのようにして、これらの機能を果たすべきかには触れていない。現実には、卸の物流センターや小売の配送センター、メーカーの物流拠点など複数の主体がこれらの機能を分担している場合が多いであろう。同じ機能を果たすならば、どの主体によって運営されてもモデルの上では等価である。
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| 既存資源を活用するのか、新規の投資が必要なのかについては考慮しない
本モデルは、物流量や配送エリア、輸送距離に相関する変動費のみを取り扱い、使用する設備等が既に投資済みであるか、新たに投資が必要かの区別はおこなっていない。
物流構造を実践する上では、既存の設備や人員の活用、新規投資の決定などは重要なファクターであり、モデルによって理想像がわかっても現実にとれる意思決定は限られてくるであろう。しかし、本モデルは、制約のある中にもどの方向にすすむべきかを示すことを目指している。
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| 小売業者の個別の要求への対応は考慮していない
カテゴリー納品、売り場別納品、独自のバーコードの添付、定時納品、値札つけなど、大規模な小売業者は中間流通に対してさまざまな個別の要求をおこなう傾向が顕著である。小売業者の個別の要求に対応するために、卸業者が特定小売チェーンのための専用物流センターを設置するようなこともおこなわれている。
本モデルでは、業界全体を扱うために、小売業者の個別の要求への対応は考慮していない。小売業者の個別のさまざまな要求にどのように対処していくべきかは、本報告書の別冊で論じられているので、そちらを参照していただきたい。
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