業界サプライチェーン・モデルにより明らかにされた主要な結果は次の通りである。 (1)総物流コストを最小化する中間物流拠点数は全国114個所程度 化粧品・日用品業界では、約1000社といわれるメーカーから30万店といわれる小売店舗へ品切れなく継続的に商品を補充しつづけなくてはならない。そのためには、数多くのメーカーと数多くの小売をつなぐ中間結節点としての中間物流拠点がなんらかの形で必要とされる。では、この中間物流拠点は全国で何個所程度必要であろうか、というのが業界サプライチェーン・モデル作成の主要な目的であった。 本研究会で作成した業界サプライチェーン・モデルでは、中間物流拠点は、全国で114個所程度あるとき総物流コストが最小化されることが明らかにされた。(3-1参照。) 図表1-17~1-25の総物流コスト曲線はみればわかる通り、最適拠点数よりも各地域1拠点増える程度では総物流コストにさほど大きな影響を与えない。しかし、114が2倍に増えればかなり大きな影響を与える。現状では、全国の卸業者の数だけでも、2000社にのぼるといわれている。卸1社が複数の物流センターを持つことが少なくなく、小売の配送センターなども中間物流拠点の機能を一部分担していることを考え合わせれば、現状との大きな乖離は明らかである。 また、本モデルにおいて中間物流拠点の数が全国で114個所である場合の総物流コストは、年間1270億円、卸売販売金額比率で4.61%である。 現状と比較すれば、1995年業種別物流コスト実態調査報告書(社団法人ロジスティクスシステム協会編)によると、日用雑貨卸の卸の物流コスト比率は、卸売金額に対して6.24%であるとされる。メーカー・卸間の輸送コストは、メーカーによって大きな差があるが、仮に生産者出荷金額に対して3.3%とし(当研究会調べ)、メーカー、卸、小売の販売価格の比率を60:75:100として、卸売販売金額比率に対する(本モデルで定義する)総物流コストの比率を算出すると8.88%になる。最適中間物流拠点数が達成された場合に比べ、約1175億円、48%のコスト削減になる。 上記の物流コストの試算はきわめて大まかなものであるが、本モデルの算出結果から見えるサプライチェーンの姿が達成されれば、業界全体の物流のコストが大きく減少することは間違いないであろう。 (2)輸送の集約によってさらに効率化が可能 基本モデルでは、生産地で出荷された商品が消費地に輸送され、中間物流拠点でとりまとめられ、バラピッキングと店舗別仕分けを経て、店舗に配送されると いう最も単純な物流形態を想定したが、さらに効率化をすすめるためには、さまざまな施策が考えられる。その一つとして、本研究会では、生産地側で集荷をおこない、消費地にまとめて輸送する「輸送効率化モデル」を検討した(3-2参照)。 輸送効率化モデルでは、輸送コストは基本モデルに比べて首都圏では14.65%、九州では1.68%削減されることが明らかになった。輸送の集約をおこなっても、総物流コストを最小化する中間物流拠点の数は影響されないが、中間物流拠点の数に対する総物流コストの曲線が、基本モデルの場合に比べてややフラットになるので、中間物流拠点の増加によるコストの上昇を押さえる効果があることがわかった。共同輸送やマルチピックのようなメーカーから消費地への輸送を効率化する試みは、特に物流拠点が密集した地域で有効であるといえる。 (3)環境が変化したとき 3-3に、以下のような環境変化がおこった場合のシミュレーションをおこなった。
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