(3) 総物流コストの最小化
図表1-5 物流コストのトレードオフ

 業界サプライチェーン・モデルでは、(1)(2)で示した前提に基づき、化粧品・日用品業界で総物流コストを最小化するために全国で必要な、中間物流拠点数を求める。
 物流コストには、大きく出荷倉庫から中間物流拠点への輸送のコスト、中間物流拠点における在庫や荷役のコスト、中間物流拠点から店舗への配送コストがある。中間物流拠点が増えるほど、多くの地点への輸送がおこなわれるので輸送コストは上昇する。中間物流拠点における在庫・荷役は、拠点が集約されるほど効率化が進むので(ただし、無制限には大きくできないので限界がある)、中間物流拠点が増えるほどコストが増加する。中間物流拠点から店舗への配送は、拠点の数が増えるほど担当地域が小さくなるのでコストが減少する。したがって、輸送コストと中間物流拠点における在庫・荷役のコストは、中間物流拠点数が増えるにつれて増加し、配送コストは、中間物流拠点が増えるにつれて減少する性質をもっている。
 このようなコストのトレードオフがあるため、図表1-5に示す通り、総物流コストは、U字のカーブになる。U字の底点が総物流コストの最小点であり、そのときの中間物流拠点数が最適物流拠点数である。
 
中間物流拠点の規模の制限
上記の考え方にしたがって算出された最適物流拠点数では、中間物流拠点の規模が非現実的に大きくなりすぎる場合がある。中間物流拠点の規模が大きくなるのにしたがって、敷地面積が広大になり用地の確保が困難になり、また、出入庫するトラック数が増えて地域の交通事情を著しく悪化させるからである。そこで、日本においては、取扱金額が年間250億円程度が上限であると判断し、拠点の規模が250億円を超え
ないように調整をおこなった(図表1-5参照)。