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プラネットユーザー会2016 基調講演抄録

 

 株式会社 女ゴコロマーケティング研究所 代表取締役 所長 木田 理恵

 女性の時代と言われる今、女ゴコロをつかむマーケティングを成功させるにはどうしたら
 よいのか。女性ならではの視点から、木田理恵氏にご講演いただいた。


 *本稿は2016年11月に行われたプラネットユーザー会2016における木田代表取締役の講演内容を
 『 PLANET vanvan 』編集部で要約したものです。
(PLANETvanvan 2017年冬号(Vol.113)掲載記事より)

男と女は平等だが、歴然とした「性差」がある

 日本では今、女性が労働力として活躍することが期待されている。一方、少子化問題も深刻で、女性には子どもを産んでほしいともいう。仕事と育児、どちらかだけでも大変なことで、女性は日々、多くの不安や不満、不便に悩まされている。ここにビジネスチャンスがある。商売とは「不」の解消であり、「不」をたくさん抱えている今の女性はビジネスの宝庫なのだ。

 世界の消費の64%を女性が支配しているというデータがある。女性自身の消費はもちろん、家庭内でも日用品をはじめ子どものおもちゃや夫の服飾品、あるいは住宅や自動車といった高額商品まで、購買決定権や影響力を持っているのは実は女性だ。

 これからのビジネスは、女ゴコロをつかむことが成功のカギとなる。男と女は平等だが、「性差」があるということを認識しておきたい。男女は身体のつくりが違うし脳も違う。ライフスタイルも違えば、価値観も異なるのだ。

 イギリスの心理学者が、男性脳はシステム化、女性脳は共感だと言っている。男性の脳はものごとの原因と作用、結果を分析して考えるのに長けている問題解決脳だ。話を聞く時は、いつ、どこで、何があって、どこに問題があるかシステム的に考える。一方、女性の脳の特徴は共感だ。人の話を聞く時、この人は今どんな気持ちで話しているのか、どんな反応をしたら喜ぶのかを考えて、相手が望んでいる行動をとるのが女性的な脳だ。

 これらの傾向はもちろん個人差があり、男性でも女性脳的傾向の高い人、あるいはその逆も人もいる。大切なのは価値観の違いを知り、狙いたいターゲットはどちらのタイプなのかを見定め戦略を立てることだ。

 女脳だけでも男脳だけでも、これからの企業の発展は難しい。両方を兼ね備え使い分けのできるバイリンガルの育成や、両者を活用できるハイブリッド型の経営が必要とされている。男性と女性、お互いのよさや違いを知ることに、これからのマーケティングのヒントがある。

「スペック」にこだわる男性、「イメージ」にこだわる女性

 男と女では買い物価値観にも違いがある。男は商品を選ぶ際、機能や性能で判断する。男性向け情報誌には、商品とスペックをずらっと一覧にして徹底比較する記事が多い。男はそれを見てワクワクしながら、このすごい技術を試してみたい、誰よりも早く手に入れたいと考えるのだ。

 女がモノを買う時は、機能や性能ではなくて、その商品を手に入れた瞬間から、自分の生活がどう変わるかをイメージする。これを持っていたら、まわりから褒められるだろうか。今よりもっと幸せな気分になれるだろうか。頭の中に「私の幸せ」のイメージが鮮明に浮かべば浮かぶほど、その商品を買いたいと思う。

「勝負」にこだわる男性、「共感」したい女性

 男にとって買い物は「勝負」だ。わからないことを店の人に聞くのは、負けている気がして恥ずかしい。恥をしのんで店員に話しかけているのだから、男が店員や営業担当者に求めるのは、無駄なおしゃべりではなく商品知識だ。

 女にとって買い物は「共感」だ。質問は相手と親しくなるためのコミュニケーション手段で、店員や営業担当者に求めるのは「親和」である。女性から質問や相談をされた時、いきなり問題解決をしてしまうのは、できない営業担当者だ。できる営業担当者は、そこで相手の話をよく聞き、一緒になって共感する。するとお客様は勝手に買ってくれるのだ。

 また、男の買い物は人より勝つことが大事だから、お気に入りは内緒にする。自分が気に入ったからといって、誰彼となく勧めない。一方、女は主観的で、私が気に行ったのだから、きっとみんなも気に入るはずだと考える。共感してもらいたいから、自分のためにクチコミをする。

 私が会社で「このブラウスどうかしら」と言ったら、10人中8人の女性が褒めてくれるだろう。それは、相手の気持ちを察して、すぐに返してあげる共感能力があるからだ。本当に似合っているかどうかは関係なく、ステキと言う。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSは、まさに共感のツールだ。気に入った写真をアップすると、みんながいいねと褒めてくれる。すると嬉しくなってまた拡散する。それでクチコミがどんどん広がっていく。

「結果」がよければいい男性、「買い方」にこだわる女性

 男の買い物は、「結果」を得るために最も効率のよい方法を選ぶ。メーカーや品番を調べて「価格.com」や「アマゾン」で検索し、一番安く、一番早く買えるところから買う。結果として欲しいものが手に入れば、どこで買うかはあまり関係ない。

 一方、女は「買い方」にこだわる。どんな店で、店員とどんな会話をして、どんな雰囲気の中で商品を買うか。そうしたプロセスも商品の価値に乗ってくる。同じ品質で同じ価格だとしたら、「買い方プロセス」の満足度が高い方で買う。ときには「買い方プロセス」の価値が、価格や便利さを超えるときがある。どうせ買うなら、少し高くてもあの店で買いたい。そう動くのが女性の心理だ。

 カフェの食事は値段が高い割に、たいしておいしくない。それでもおしゃれなカフェには女性がたくさんいる。彼女たちは食事だけでなくその空間、そこでの時間といった周辺価値を楽しんでいるのだ。だからそこにプラスαのお金を払う。

 メーカーにとって、モノだけで圧倒的に勝てる時代ではなくなってきた。そうなると、売り方で差別化して、同じ買うならこのメーカーから買いたい、この店から買いたいと思わせるようなプロセス開発が非常に大事になってくるだろう。

女ゴコロをつかむ8つのキーワード

女ゴコロをつかむための8つのキーワードを以下に挙げた。マーケティングをする際には、この8つのキーワードをぜひ意識していただきたい。

❶ 『幸せ』

 女性にとって、モノを買うのは「幸せになる」ための手段にすぎない。モノを売るのではなく、イメージを売ると考える。キレイになるとか、癒される、自信が持てる、褒められる、そういった女性にとっての幸せを連想させるようなモノづくり、パッケージづくりが必要だ。

❷ 『育む』

 最近は、お客様との関係性づくりもマーケティングと定義され始めている。お客様との身内感覚の関係を育むことが大切だ。関係性はポイントカードだけではつくれない。SNSやイベントをうまく活用している事例を研究するといい。

❸ 『選ぶ』

 女性はたくさんの中から「私にぴったり」を選びたい。候補が1つだけでは不安になる。女性に提案する時は選択肢を3つくらい出すといい。比較して納得して選んだ商品と、選択の余地なく買わされた商品とでは、満足度が全然違ってくる。

❹ 『共感』

 女性はストーリーや人に共感する。モノを紹介する時は、スペックではなく、それを使っている人の声を取り上げるといい。そのユーザー層が憧れるようなライフスタイルをもつ人が、この商品のおかげでこんなに生活がステキになった、と語るだけで心に響く。その影響力は大きい。

❺ 『誠実』

 女性は誠実であるかどうかに敏感だ。誠実は目に見えないので、企業はぜひ「見える化」していただきたい。女性にとって大事なのは、私や私の家族に対して誠実な会社かどうかということ。地球環境の貢献も大事だが、「主婦の気持ちを考えてペットボトルのラベルをはがしやすくしました」といった対応に誠実さを感じたりする。

❻ 『特別』

 女性はいつでも、その他大勢でなく「特別扱い」してほしい。いつ行っても初めての客のような対応をされるとがっかりするのだ。たとえばアマゾンで買い物すると、関連商品をいいタイミングで勧めてくれて、自分が大切にされている気分になる。今、テクノロジーが発展しているので、その方の好みや購買パターンで特別扱いしようと思えばできるはずだ。そういったことをもっと真剣に追いかけていく必要がある。

❼ 『ご褒美』

 女性は普段、10円、20円でも安いものを選ぶのに、「ご褒美」という言葉がつくと、とたんに財布のひもが緩む。日常的なプチご褒美は高価なものではなく、コンビニの100円スイーツの代わりに洋菓子店の400円のショートケーキを買うといったものだ。ご褒美として選ばれる商品をつくるのか、10円でも節約したいと思われてしまう商品をつくるのかで、売り上げは変わってくる。売り方やネーミングを工夫してご褒美にふさわしい商品を考えて商品開発していけば、面白い展開があるだろう。

❽ 『学ぶ』

 女性は学びが好きだ。仕事のためではなく、自分のために好きなことを学ぶ。人は知識が身に付くといいものが欲しくなる。たとえば高いワインをただ勧めても買わないが、勉強会を開いてワインの違いを説明すると、たまには違うワイン買ってみようかしらとなる。そして、それを人にクチコミしてくれる。女性は常に暮らしのクオリティを高めたいという意欲を持っているのだから、知ってもらう機会を提供する努力が企業側には欠かせない。

店舗vsネット通販ではなく、シームレスな購買体験を

 ネット販売が普及し、一時期、店舗で比較検討してその商品をネットで購入するという「店舗のショールーミング化」が問題視された。しかし今は逆に、ネットで商品情報を検索し、実際の店舗で商品を確かめてそこで買う「ウェブルーミング」も増えている。消費者にとって、店舗vsネット通販ではない。最適な商品を最適な場所でシームレスに買いたいのだ。だからメーカーも、どこでどう購買のチャンスをつくるのか、シームレスに考えていく必要がある。

 とくにリアル店舗は、空間でモノを見せることができる。その最大の利点を戦略的にとらえ、五感を刺激する店づくりを意識するといい。ネット販売では、聴覚、触覚、味覚、嗅覚に訴えるのは難しいからだ。

 最近はついネットありきでマーケティングを考えてしまうが、日本の人口の約半数はネットを日常的に使っていないということも忘れてはいけない。ネットを使わない人には、CMのようなマスベースのインパクトのある広告が有効だ。一方、ネットを駆使する人たちには、インパクトよりも共感のほうが効果的だ。情報拡散力のある人たちの口から「これいいよ、おもしろいよ」と広げてもらう。それが最近流行の広告宣伝手法だ。

 女ゴコロなんて覗くのは怖い、ネットの世界なんて理解するのは難しいと、敬遠していてはいけない。リアルな世の中で今、起こっていること、人々が感じていることを知ろうとするところから、次のマーケティングが見えてくる。今日お話ししたことの中に、明日からのビジネスにお役に立つヒントが一つでもあれば嬉しい。

■ 木田 理恵 氏
 (きだ りえ)
1969年生まれ。商業コンサルティング、SPプランニング会社を経て、女性市場マーケティング会社のチーフプロデューサーを務める。2009年11月に、株式会社レスコフォーメイションの常務取締役に就任し、同社内に「女ゴコロマーケティング研究所」を創設。2013年4月に独立し、「株式会社女ゴコロマーケティング研究所」(http://www.onnagokoro.com)を設立。
女性ならではの視点を活かし、これまでに数々の女性向け商品・サービス、店舗の企画、マーケティングを手がける。自身が企画し、講師を務める「女性マーケター養成講座」では、女性の発想や企画力、プレゼンテーション力を高め、企業の業績に貢献する人材の育成を行い、受講生は600名を超える。
「女ゴコロマーケティング」や「女性活用」などをテーマとした講演も多数。著書に、『彼女があのテレビを買ったワケ〜男がわからなかった、女が商品を選ぶ本当の理由〜』がある。

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