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会長の読書(旧「社長の読書」)

 

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日本人と雑草(梶田正巳著、新曜社)

 あまり馴染みがなかった新曜社、社長 塩浦造気鵑高校の同窓生であることを知り、1冊選んで読んでみた。

 本書の著者梶田正巳は心理学者であるが、和辻哲郎の「ヨーロッパには雑草がない」と言う言葉から発想して、なぜ日本人が勤勉であるかを論じている。

 日本の農業において、雑草取りは非常に労力がかかる重労働であるが、日本人は営々とそれを続けてきたことが日本人の勤勉性を育んだと言うのが、本書の主旨である。

 そもそも、なぜ日本は雑草が多く欧米は少ないかを記述している部分がおもしろい。日本の生物多様性をもたらしているのは、南方からの海流であるとし、ヨーロッパとアメリカの海流を比較している。日本は南方から短い距離で黒潮がやって来るが、欧米は非常に長い距離を経て、しかも北にあがってから下って来ると言う海流になっている。したがって、日本には多くの植物の種が漂着しているのに対して、欧米では少ない。確かに、イギリスのゴルフ場には芝生以外の草はほとんどない。
 また、月別の気温と降雨量を比較し、欧米の夏は降雨量が少ないのに対し、日本は気温が高い夏に降雨量が多い。それ故、日本は夏に多くの植物が繁茂し、作物を栽培する田畑の雑草取りは欠かせないことになっているというわけである。

 ヨーロッパでは大きな戦争が幾度となく繰り返されてきた。しかもそれらの多くは異民族による侵略で、戦いに敗れるとあらゆるものが奪い去られる。こうした歴史を経た国々では、勤勉に努力するよりも、一気に勝ちを占めて収奪する道を選ぶ傾向がある。日本は、異民族による侵略はほとんどなかったため、勤勉に努力を続けた結果の多くは報われる。したがって、日本では勤勉に努力することに価値があると信じられるようになった。

 梶田は、心理学者らしく、マーティン・セリグマン実験を引き合いに出している。セリグマンの実験は、犬を三つのグループに分け、Aグループはパネルを押すと電気ショックを避けられるグループ、Bグループは何をしても電気ショックを避けられないグループ、Cグループは電気ショックを与えないグループ。この実験の後、柵を跳び越えれば電気ショックを避けられるような箱に入れたところ、AとCグループはすぐ柵を跳び越えたが、Bグループは失敗したと言う実験である。なにをしても避けられない、つまり努力をしても報われないと学習をした犬は、やる気をなくしてしまっているというわけである。

 本書では記されていないが、私見としては、日本には明確な四季があるため、冬に備える必要から勤勉になったとも考えられる。

 近頃は、日本人論がますます盛んになっているが、本書も興味をそそられる一冊と言えよう。


以上

[ 2016年04月19日 ]

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